「好きだ」



何が?
なんて言える空気じゃない。何故ならここはトイレの個室で、目の前のコイツは不良で有名で。

距離なんて無いに等しく、奴の凶悪ながら整った顔と、俺のそこら辺にありそうな顔がくっつきそうだ。そのくらい俺達の距離は近かった。



「俺と付き合え」

「え、う………」



言葉にならない声を上げて、俺は口を閉じる。
男と付き合うなんて冗談じゃない!真っ平御免だ!
しかしそんなことを言ったら、このトイレが俺の墓場になるだろう。奴の目が語っているのだ。
断ったらどうなるかわかってるよな、と。



「返事」

「ごめ、」

「あ゙?」

「いやで、」

「あ゙ぁ!?」



ほら!否定の言葉は全部却下!いちいち凄むな怖いんだよチクショー!
半ば自棄になってきている俺の口には薄ら笑いが浮かぶ。人間諦め始めると笑ってしまう生き物なのだ。
そんな気持ち悪い顔しているはずの俺の頬に奴の手が触れた。
冷たいシルバーリング。俺よりもでかい手。こんな密室だと、全てを敏感に感じ取ってしまう。なんだか恥ずかしかった。



「俺、ぜってーお前の事幸せにするから」

「っ……!」



そ、それじゃあまるでプロポーズじゃないか!
顔に集まる熱。こんなの、絶対気のせいだ。



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これは落ちましたね








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