目の前で長い足を組みながら漫画を読む幼なじみは、とてもかっこいい。二歳年上で、女の子からもモテモテらしい。
二年という壁は厚く高くて、俺は幼なじみに勝った事など一度もなかった。

まぁ、俺はガキさ。
そんな風に開き直ってしまうのは、目の前の幼なじみに散々言われたからだ。
「お前が俺に叶うわけないだろ、ガキが」
何をやっても一番な彼は、いつも俺にそう言った。そんな事、知ってる。と思いながら、俺は幼なじみの言葉を耳に入れる。だけど、俺はだってもう中学生になるのだ。出来ればガキ扱いはやめてほしい。
けれどそんな事は言えなくて、俺は幼なじみの中でいつまでもガキなんだ。



「あれ、幸人くんだ」

「あ…」



名前を呼ばれ振り返れば、幼なじみの友人が立っていた。
名前は確か、「角谷、くん?」そう、そんな感じの名前。
俺の言葉を聞いて、嬉しそうに角谷くんは笑った。



「覚えててくれたのな〜、てか幸人くんこんなでかかったっけ?」



俺を撫でながら角谷くんが言う。
角谷くんは幼なじみに引けを取らない程のイケメンだ。幼なじみがワイルドなら、彼は爽やかと言えるだろう。
頭を撫でられるのが気持ち良くて、思わず目を細めた。幼なじみなら、絶対にしてくれない行為だ。



「もう、中学生になったんだ」

「通りででかいわけだ」



より一層、角谷くんの手が早くなる。多分俺の頭はぐちゃぐちゃだろうけど、もしお兄ちゃんがいるとしたらこんな人がいいな、と思った。

角谷くんと別れ、僕は家へ急ぐ。少し、角谷くんと話し込み過ぎてしまった。
急ぎ足で帰る途中、見慣れた後ろ姿を発見した。



「あ、」

「…幸人?」



俺の呟きに気づいたのか、幼なじみはこちらに顔を向けた。
いつものにんまり顔は無くて、むしろ不機嫌にさえ見える。



「ガキがこんな時間に何してんだよ」



俺は少しむっとする。ガキだなんて知っている。だけど、幼なじみに言われると凄く嫌な気持ちになった。
こんな事一度もなかったのに。角谷くんと話をして、俺の中にガキのままでは嫌だという気持ちが生まれていた。



「……ガキじゃないもん…」

「あ?」



初めてした反論。それを聞いた幼なじみは低くてドスの聞いた声をだした。一瞬怯んだが、怯えていたらいつまでもガキのままな気がして自らを奮い立たせた。そして俺も一生懸命睨み返した。
すると幼なじみは盛大な舌打ちを鳴し、俺の腕を力任せに引っ張った。
いきなりの至近距離に俺はどうすることも出来なくなって固まる。睨むこともすぐにやめてしまった。



「口答えしてんじゃねーよ。こんな時間まで何してんだ」



そっちこそ何してたんだよ、とは言えず、俺は恐る恐る角谷くんと立ち話をしていた事を話した。
全て話し終えると、幼なじみはぎりぎりと俺の腕を握り締めた。痛くて思わず抵抗するがビクともしなかった。



「お前ふざけんなよ…」

「え…」

「こっちは我慢してやってんだ。なに角谷なんかと仲良くしてんだよ」



怒りに染まった幼なじみの目はとても怖くて、俺はただ怯えた。先ほどまで感じていたガキでは嫌だという気持ちすら、今では無いに等しい。



「ご、めんなさ…」

「…チッ。送ってくから来い」



幼なじみは俺の腕を強く引いていった。

腕にはくっきりと幼なじみの手形があって、家に帰っても安堵する事はなかった。



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受けが中3くらいになったら攻めにぱっくりいかれるんじゃないでしょうか








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