ファミレスで駄弁る学生を尻目に、俺は店員に案内された席に腰かけた。
懐かしい。
俺も、昔はよく友達とドリンクバーだけで何時間も粘ったものだ。今考えれば、店にとってはかなり図々しい且つ迷惑な客だっただろう。
昔の事を恥じつつ、また懲りずにドリンクバーを頼んだ自分に苦笑した。だって、人を待つときは大体ドリンクバーから、と俺の中では決まっているんだ。

数十分後、ドリンクバーも三週目に突入した頃、文庫本を読む俺に影が差した。
やっと来たのか、と思い顔を上げれば、そこには先ほどの駄弁っていた学生が立っていた。なかなかのイケメンである。
カチリ、とそのイケメンと視線がかち合う。なんとなく目を反らせずにいると、イケメンはにこりと微笑んだ。



「おにーさん、暇なの?」

「え?」



ニコニコと笑顔を絶やさず、彼は同じ言葉を繰り返す。
暇、と言えば暇だが、人を待っているときはどう言えば良いのだろう。正直に言っても、この手の人物が信じるとは思えないし。
思わず黙り込んでしまったら、彼は「おにーさん無視?」と笑顔を絶やさず真向かいに座った。何故座るんだ。あっちでお前の友人が暇そうにしてるから、あっちに行ってやれ。と、心で思うも何も出来ない。



「おにーさん誰か待ってんの?彼女?」

「…え、いや…違いますけど」



な、馴れ馴れしい。
絶対に俺の方が年上だろうに、彼はため口だ。別に嫌なわけじゃないが、最近の若者は、と少し遺憾に思った。
俺があまりにも怪訝そうな表情をしていたからか、彼は困ったように笑った。うん、どんな顔でもイケメンはイケメンだ。



「そんなに警戒しないで?別にとって食おうってわけじゃないから」

「はぁ…?」



取って食われても困るが。
俺が思わず首を傾げれば、イケメンくんがくすりと笑う。なんかエロい。



「おにーさんカワイー。ねぇねぇケータイ番号教えてよ」

「えぇ…?」



いきなり何を言い出すんだ。そして、歳上に対して可愛いは如何なものかと思う。

俺が渋っていれば、イケメンくんは俺の手を握った。



「ね、ダメ?」



ニッコリ微笑まれる。
そろそろ友人が来てしまう。俺は少し焦りつつ苦笑いを浮かべる。イケメンくんが手を離す気配は無く、俺は仕方なくケータイを取り出した。



「やったありがとうー!赤外線でいいよね」

「………」



黙って操作する俺、テンション高めで操作するイケメンくん。

パチン、と音を立ててケータイを閉じたイケメンくんはニッコリ満面の笑みだ。



「ありがとう。連絡するねー」



席を立って戻っていくイケメンくん。
俺はケータイを片手に、友人が早く来ていれば初対面のイケメンに番号を渡すことも無かったのに、とちょっと筋違いな考えを巡らせた。



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恋の第一歩的な感じで!








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