兄ちゃん達は異常だ。
それに気づいたのはつい最近のことで、友人に兄ちゃん達の事を話したら、引きつった笑みで「それは少し度が過ぎてる」と言われた。
確かに、おかしいと思うことは多かった。
もう中学生にもなった俺に対して「お兄ちゃんと一緒に風呂に入ろう」、と真顔で問いかけてくる一樹兄ちゃんの目に宿った怪しい光とか、「今日は俺と一緒に寝よぉ?」とベットに無理矢理侵入をはかる二葉兄ちゃんの全裸姿とか、切り傷を「俺が治してやる」とか言って舐めちゃう三弥兄ちゃんの舌の熱さとか。
思い起こせばたくさんあるこの様なこと。今まではそれが普通すぎて、全然疑問に思わなかった。
しかし、世間一般の兄弟こんなにも接触をはからないらしい(友達談)。
平凡な俺は、出来ればこんな非凡は欲しくない。兄弟とも、世間一般と同じような距離感で接していたいのだ。
どうしたものか、と俺は腕を組む。目の前のテレビで好きなアーティストが出てるにも関わらず、そっちのけで俺は悩んだ。
数分間悩んだ結果、至極安易な結論に至った。
「距離を置こう!」
「は?」
「んぅ?」
「あ?」
リビングに居ることも忘れ、思わず出た呟きに反応を示した兄ちゃん達三人は少し間の抜け声を上げた。しかし、そんな少し呆けた表情さえ様になっていた。美形は特である。
「何と距離を置くの?」
真顔で俺に問いかけてくる一樹兄ちゃんの言葉には、どこか不安が含まれていて、下手なことは言えないと悟った。
俺は三人の視線に戸惑いつつ口を開いた。
「えと、あの、と、友達と…」
「どうしてぇ?」
俺の言葉に間髪を容れず次の問いかけをしたのは二葉兄ちゃんだ。何時ものように語尾は伸びているのに、詮索するような眼差しには恐怖を覚えた。
またも俺は咄嗟に嘘を吐いた。
「け、んかしちゃって!」
「喧嘩?殴られたりしてないよな?」
訝しげな視線を俺に向けた三弥兄ちゃんはそう言って顔を近づけた。
ち、近すぎる。
思わず首を引っ込めれば、不服そうな三弥兄ちゃんを退かして一樹兄ちゃんが笑顔で俺を見つめていた。
あ、この笑顔。
怒ってるときの顔だ。
「四野、嘘はダメだよ」
さらりと頬を撫でられ、体が嫌に反応した。
兄ちゃん達は怒ると怖いんだ。
本当に嘘だから、俺は何も言えずに目を反らした。その反応をみた、二葉兄ちゃん、三弥兄ちゃんも口を挟んだ。
「やっぱり嘘だったんだぁ、もう、四野う・そ・つ・き」
「嘘?本当か、四野…」
にじり寄る三人。
恐怖で体の震えが止まらない。
俺は泣きそうになるのを堪えながら、兄ちゃん達を見上げた。
ペロリ
舌舐めずりをした一樹兄ちゃんが、一際楽しそうに笑みを浮かべた。
「嘘をつくような悪い子には、お仕置きだよね?」
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これ以上書いたら収拾がつかなくなりそうなので終了
因みに
一樹くん→社会人
二葉くん→高校三年
三弥くん→高校一年
四野くん→中学二年
イメージでした
すごくどうでもいい情報です
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