「兄貴ー」



コンコン、と自室の扉が叩かれる音がした。

俺には弟がいる。凡庸な俺とは全く似ていなくて、美形の部類に含まれる弟はなんだかんだで俺を慕ってくれていた。
そんな弟を、俺も好きだった。



「はいはーい、」



呼び掛けに返事を返せば、ガチャリと扉があいた。
そこにはいつもと変わらぬ弟の姿。



「お邪魔してますぅ」



俺の隣で漫画を読んでいた友人が漫画を閉じて弟に声をかけた。

友人も美形の部類に入る。何気無しに浮かべたへらりとした笑顔は、女子うけがよさそうだ。

友人を一瞥、渋い顔をした弟は俺に焦点を合わせた。



「…兄貴、誰この人」

「友達の篝くんです。篝、こちらは弟の鷹臣です」

「どうも〜」



俺が友人、もとい篝を紹介すれば、益々不機嫌面に変わった弟、鷹臣は「ふーん」とつっけんどんな言葉を溢して俺の隣に腰かけた。妙に近い気もするが、気のせいの一言で片付けた。
鷹臣は客用の菓子を食べ始め、篝はまた漫画を読み耽る。
野郎が三人並んで座るという奇妙な空間には、鷹臣が煎餅を噛み砕くボリボリという音だけが虚しく響いた。
特に沈黙を苦に感じなかった俺は、美形二人に囲まれているのだから、オセロ方式で俺も美形にならないかなぁ、なんて下らない思考を巡らせるのに勤しんだ。

数分たち、どうやら沈黙に耐えきれなくなった篝が、パタンと漫画を閉じると、俺に顔を向けた。



「ねぇ、鷹浪」

「んぉ?」



ぼんやりと壁のシミの数を数えていた俺は、突然の呼び掛けに変な声が出てしまう。
ちょっとした羞恥を感じながらも気を取り直して篝に目を向けた。



「何?」

「鷹浪って、弟くんと仲良いのぉ?」



チラリ、と俺の後ろにいる鷹臣を一瞥したあと篝はそんな事を聞いてきた。
何故そんな事を聞くんだろう、と首を傾げつつ、俺は口を開いた。



「仲良い方だとは思うけど。俺は鷹臣のこと好きだし」



笑顔を作ったまま固まった篝は「そっかぁ」と小さい声で呟いた。
先ほどから近い距離にいた鷹臣は、俺の言葉を聞いて数秒後、飛ぶように抱きついてきた。腕が首に回っていて、かなり苦しい。



「兄貴…!俺も大好きだぜ!!兄貴ぃ!!」

「ゔ、ん…ありがとう、た、かお゙み。お、兄ちゃんそろそろ死ぬ゙ぞ、!」



俺の言葉など一切聞こえないのか、鷹臣は更に腕の力を強くする。三途の川が見えるのに時間はかからなかった。



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弟×兄←友人
的なやつです…
友人の好意が伝わりづらいのはご愛嬌








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