バレンタインネタ
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「バレンタインかー」
甘い匂いが今にも香ってきそうな程、街の外装も内装もバレンタイン一色だった。
それを見た友人が、ポツリと言葉を溢した。
「何?今年は何十個貰えるかなぁとか?」
「ちげーよバカ」
俺が茶化すと、友人は心底ウザそうに対応してくる。友達に対してその態度どうなんだ。モテるからって調子乗りやがって!
俺が口を尖らせながら、そんな事をグチグチ言っていたら、友人は微苦笑を浮かべていた。
なんだかバカにされた気分だ。
「因みに去年は何個?」
「52個」
「うわ死ね!鼻血でショック死しろ!」
一日にして俺が食す一年分位のチョコを貰ってんのかよ、コイツ。俺なんて、毎年母と妹のお情けで一つずつ貰うくらいだってのによ。
少し高い位置にある友人の涼しい顔を見て俺のムカつきは強さを増した。
「お前は何個?」
「聞くなよ、うぜーな!滅びろ!」
「怒んなよ」
俺がむきになって暴言を吐けば、友人は笑みを溢した。
きっと、俺がチョコを貰えないことをせせら笑ってんだ。
顔もよく性格もいい友人が、そんな事を思っていないのは知っているのに、今の顔はそう思わせるほどあくどいものだった。
「お、俺だって今年は見込みくらい…」
「あ?嘘吐くなよ馬鹿」
俺がそんな事を溢せば、友人は呆れたような眼差し。
そんなに俺はチョコ貰えなそうなのか?
「あ!お前強がりだと思ってんな?!」
「それ以外に何があんだよ」
「聞いて驚け!」
少し元気を取り戻した俺は咳払いを一つ。
「なんと!今年はくれるって言ってくれたんだよ!隣の席の女子が!」
「……」
ふふん、得意気に鼻を鳴らす。
隣の席の三木さんはとってもノリがよく、バレンタインの話を持ち込めばチロルの一個や二個くらいくれると言ってくれたのだ。本当に、三木さん様様だ。
「もちろん義理だけどなー。でも俺すっげ嬉しい!お前にはわかんないだろうけどな!」
俺は笑いながら友人の肩を叩く。すると、友人はしかめっ面を浮かべたまま何も言わずに駈けていった。
残された俺は、小さくなっていく友人の背中をぼんやりと見つめていた。
次の日、バレンタイン本番。
三木さんは、なんと手作りチョコをくれた。
感動で少し涙ぐんでいたら、俺のより数倍でかい箱を渡され、友人に渡してほしいと言われた。何とも言えない気持ちだ。
見るからに本命なチョコを片手に、俺は友人を探す。
暫く探し回れば、友人の広い背中を目にとらえた。
「お!瀬能ー!」
振り返った友人は、俺の手元を見て驚いているようだ。
俺はお前の手に下げられている紙袋から溢れそうなチョコに若干引いているよ。
「探したぞー、あ、これお前に」
「俺に…?」
俺が三木さんのチョコを差し出せば、友人は恐る恐るそれを受けとり、それを大切そうに抱えた。紙袋の意味がない。
少しの間俺の顔を眺めたと思えば、慌てたように紙袋の奥から上等そうな箱を取り出した。
「これ、お前にやるよ」
「え、貰ったもんだろ、いらねーよ」
「俺が自腹で買ったやつだし」
そう言って、友人は箱を俺に押し付けた。思わず受け取った俺を見て、満足そうに歩いて行った。
俺はその高そうな箱を眺めながら首を傾げるのだった。
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バレンタインですね
とってもお粗末な文すみません
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