7月の中旬、蒸し暑いある日、クラスメートの吾妻に、家に来ないかと誘われた。
吾妻とは、特別仲が良いわけではない。それこそ、地味な俺と派手な吾妻とでは接点は少なかった。
何故俺が呼ばれたのか、と疑問が残ったが、特に断る理由も無いので俺は吾妻の家へ行くことにした。

吾妻の広い背中に着いていくこと数分、少し寂れたアパートに着いた。吾妻は一人暮らしらしい。



「お邪魔しまーす…」



俺が小声でそういえば、吾妻は綺麗な顔でクスリと微笑んだ。俺が女だったら、惚れてるなと思った。
綺麗に整頓された部屋に足を運ぶと、ソファーに座るよう促されたので素直に応じる。吾妻は、飲み物を取りに行くとキッチンへ消えていった。
他人の家とは何とも落ち着けないものである。寛ぐ事も出来なかったので、俺は辺りを見渡した。
すると、テーブルの上にノートが一冊ぽつりと置いてあった。
それは、何となく存在感があり、俺は思わず手に取っていた。
見た感じは、只のキャンパスノートだ。
なにげなしに、俺は中を覗いた。



4月20日

好きな奴が出来た。
一目惚れだった。これからは、このノートにその人の事を書こうと思う。



男らしい字の羅列を読み、吾妻に好きな人がいる事が発覚した。しかも、このノートはその子への想いを綴っているらしい。
以外と女子みたいなとこもあるんだな、と思ってにやけながら、俺はまた文字の羅列を読み始めた。



4月25日
あいつと目が三回もあった。
嬉しい。



5月10日
あいつの写真を撮った。
可愛くてにやけが止まらない。



5月13日
あいつの家へ行ってみた。
部屋は分かんなかったけど、あいつが暮らしてると思っただけで興奮した。



5月28日
今日はあいつが俺にノートを手渡してくれた。
そのノートは絶対捨てない。



6月12日
あいつの体操着を拝借した。
後でこっそり返そう。



吾妻の犯罪すれすれな日記を読み、苦笑いが溢れた。
普段の爽やかな吾妻には全く結び付かない内容だ。
それでも怖いもの見たさからなのか、俺はそれを読み進めた。
そして、遂に日記は昨日のものへとなった。



7月14日
明日あいつを部屋に呼ぼうと思う。
気持ちが押さえきれなかったらその時は、そのまま…。
あぁ、愛してるよ、孝太くん



孝太。
今まで一度も出てくる事の無かった、相手の名前だ。
俺の身体中から、汗が吹き出るのを感じた。



「見たの?」

「ッ…!」



背後からの声に、俺は声をひきつらせて日記を閉じた。
振り向けば、思ったよりも近い距離に吾妻は立っていた。眩しいくらいの笑顔は、恐怖を促進させた。



「ははははは、そんなに怖がらないで、何もしないよ?ねぇこっち向いて。あぁ、やっぱり可愛い顔してるね、ずっと見てたんだよ、気付いてた?孝太くん」



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吾妻はヤンデレというよりはストーカーですね
どっちにしてもスキ…








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