口癖は面倒くさい、あらゆる面倒事の大体はパスしてきた。
そんな俺が、今とっても面倒な場面に直面している。



「みんなよろしくな!!!」



何やら転校生だという、無駄に声のでかいまりもみたいな頭したやつ。
俺が通っているこの学校は全寮制でやけに辺鄙なところにたっていて、転校生なんてほとんど来ないと聞いたことがある。見た目が奇妙なあいつがさらに妙に見えた。
「じゃあ空いてるところ座れ」
教師の声に、俺は露骨に嫌な顔をしてしまった。空いてるところなんて俺の隣しかないじゃねぇか。



「俺佐伯ってんだ!!お前名前は?」



声でけぇ。すぐ隣にいるのに何故そんなに声を荒くする必要がある。
俺はうんざりしながら名前を言う。「貴博か!よろしくな!!」
よろしくなんてしたくねぇよ、と俺は心のなかで毒づきながら、そいつを適当にあしらった。

次の日、生徒会役員と一緒にいる転校生を見かけた。
普通なら何も不自然なことなどない光景だが、この学校の生徒会は普通じゃないため、それはそれは多くの視線を集めていた。
この学校の普通じゃない。生徒会はみんな美形で、ファンクラブなんてものさえあり更には親衛隊までついているらしい。
そんな生徒会に一般生徒が近づくことを、親衛隊は良しとしていなかった。なにやら、生徒会に近づいて仲良くなることは抜け駆けで、生徒会メンバーはみんなのもの。という変な暗黙のルールが存在するのだ。そのルールを破れば、それ相応の報復があるとも聞いたことがある。
転校してきたばかりのあいつはその事を知らないのだろう。
転校生に親衛隊であろうちびたちが近づいていく。あーあ、なんだか不穏な空気になってきた。



「ちょっとそこのもじゃもじゃ!なんであんたみたいな奴が生徒会役員様と仲良さそうにしてるの!」

「もじゃもじゃなんて失礼だな!友達と喋ってて何が悪いって言うんだ!」



ちびの怒号に転校生の大声が重なる。騒音だ。
それにしてもあいつ、生徒会が友達とは交遊関係の広い奴だ。転校生なのに。
友達と言う発言に、ちびは鼻で笑う。君なんか生徒会役員様にふさわしくないだとか、そんな感じの言葉を放った。



「誰がそんなこと決めたんだよ!ふさわしいとかそういうのは、お前らが決めることじゃないだろ!!」



ちびが言葉に詰まる。そりゃそうだ、転校生の言葉は正論だもの。このまま痴話喧嘩も終わりそうだな、と俺は寮に戻ろうと踵をかえした。「ああ!貴博!」俺のなまえが辺りに響き渡った。
嫌な予感がする。
振り返れば、笑顔の転校生が笑顔で手をふりながらこちらにやって来ていた。論破されたちびの姿はすでにない。



「どうしたんだ?一人か?なら俺と一緒に」

「いや、お前は生徒会と一緒にいるんだろ」



だから俺といる必要ないんじゃないか?

そう俺が言えば、転校生は生徒会を見やる。「あいつらとはまたあとで遊ぶし、今は貴博といたい!」少し顔を赤くしながら転校生が叫ぶみたいに言い放った。俺は転校生の雰囲気に圧され、思わず後退る。



「なあ、俺、貴博と仲良くなりたいんだよ」



じりじりと近づいてくる転校生に、俺は素早く逃げ出した。
だって、あいつといるとたぶん面倒くさい!



「あ!!待てよ!!!!」



転校生が俺を呼ぶ声が校内中に響いた気がした。








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