花粉だの今年は特に量が多いだの毎年言っているような事をニュースで流していた。
母は花粉症なので、ニュースを見て顔をしかめていたが、俺は花粉症じゃないため、特に何も感じずにテレビを切る。
リビングにおきっぱなしにしていたマンガ本を片手に、二階の自分の部屋に戻った。
扉を開ける。そこにはニコニコと微笑む格好の良い男が、
バタン
俺は扉を閉めた。
到頭、幻覚なんて見えるようになってしまったのか、と、目を擦りもう一度扉を開ける。
やっぱりそこにはイケメンが。



「ふ、不法侵入ーーー!!!」



俺が叫びながらリビングに逃げようとするが、いつの間にか動き出していた男の手に捕まり、部屋へと引きずり込まれた。
俺はすぐさま距離をとり、声をあげる。



「だ、誰だお前!こっちにくるな出ていけ!」

「私は杉花粉というものです。今日は貴方を花粉症にするべく参りました」

「は…」



柔らかな笑顔で言われて、俺はポカンとする。杉花粉、ってあの杉花粉か?今テレビで嫌にも目にはいる、あの。
俺は途端吹き出した。
「ふざけてるのかお前。花粉は粉だろ?」
俺の言葉にも顔色ひとつ変えず、男はまたも喋り出した。



「一般的にはそうですね。私の同士も粉が多い。けれど、稀にあるのです。人型も。私は、花粉症になりにくい人を必ず花粉症にするべく生まれたのです」

「そんなもの信じられるかよ」

「では、身をもって体験していただきましょうか」



身を乗り出す男に文句を言おうと口を開くが、それは男の口に塞がれた。かぶりつくような口づけに、俺は戸惑いも隠せずふがふがと間抜けな息遣いが部屋に響いた。
暫くしてようやく離れた男を俺は突飛ばし、口元を一生懸命擦った。



「な、なななな何すっ…くしっ!は!?くしゅん!」

「ふふ、ほらあっという間だ」



くしゃみが止まらず、涙も鼻水も出てきた。なんだこれ、初めてだ。またも近づく男にさえ反応できない。



「ひどい顔」

「ひっ…」



男が目元を舐める。そこから耐え難きかゆみが襲った。俺は目を擦りたくて腕を動かすが、それは男の手により遮られた。「は、離せ!!」すると男は変わらぬ笑顔で言った。「掻くと酷くなる一方ですよ 」男は額にキスを落とした。すると、先程の耐え難いかゆみが嘘のように引いていき、涙も出なくなった。突然楽になった事で、俺は呆然と男の顔を見つめる。



「花粉症になった気分はどうですか?」

「…最悪」

「そうですか。突然ですものね、当然です。次は、徐々に私の花粉で犯してあげますね…」



男の怪しい笑みに俺は身体が震えた。








「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -