「監禁したい」



サラサラな髪の毛に、上品な顔立ち。こいつを見ると、誰もが連想させる言葉がある。

『王子様』

そう、こいつのあだ名は王子だ。
こいつが王子なら、俺は庶民といった所だろうか。剛毛で、サラサラとは程遠い天然パーマ。平凡な顔立ちは可もなく不可もない。うん、間違いない。
そんな奴が俺の目の前に現れて開口一番これだ。爽やかな雰囲気とは全くもって似合わない言葉だった。



「は?何、え、何を?」



主語がない言葉に対して、それから、何故それを接点の全くない俺に言ったのか、俺は混乱しながら2つの疑問を王子に問う。
王子は優しく微笑むと、長い指をこちらに向けた。人を指差すのはよくないぞ。



「君。君以外に誰がいるって言うの?」

「は、はぁ…」



確かに、この教室には俺と王子以外人っ子一人いないが、おかしいだろ、普通に考えて。
いつもの王子の姿を想像すれば、にわかに信じがたい単語だ。
もしやこいつは王子の偽物?
目の前の瞳を覗きこむ。透き通った薄茶色だった。



「どうしたの?可愛い顔して」



可愛い発言はこの際スルーしても構わないだろう。
王子…もしかして頭でも打ったのだろうか。打ち所が相当悪くて、こんな平凡野郎に電波紛いな事を口走ってるとか?
……あり得る。
俺は思わず目の前にある王子の頭を極力優しく撫でた。



「なぁ王子、病院行こうぜ。俺ついてってやるから」

「………」



頭を撫でる手を止めさせない辺りは、満更でもないらしい。
押し黙る王子の顔を、再び覗けば真っ赤な顔と遭遇した。
初めて王子の涼しい顔以外を見たかもしれない。正直驚いて、撫でていた手を無意識に止める。すると、その手は王子にすくいとられ、握られた。



「……ダメだ…君をこのままにしておいたらダメだ!やっぱり君は僕に監禁されるべきだ!」

「え、えー…」



理不尽な物言いに思わず顔がひきつる。
何もダメじゃないし、監禁は無理だ。

王子の顔は本気だった。

流石の俺も、貞操の危機を感じ始める。



「も、帰ろうぜ、王子」

「……一緒に帰ってくれるの?」

「おうおうお安いご用だぜ」



手を握ったまま強く見つめてくるものだから、俺はうんうん頷く。
監禁よりましだ。
一緒に帰れば、監禁されなくて済むならいくらでも帰ってやろう。



「ありがとう…!やっぱり君は素敵だ…!」

「よせよ、照れるだろ」



満更でもない俺は自らの頭をかいた。



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この後どうせ監禁されるんだろうなー…








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