無事食事を終えたら、なんだかんだで時間は7時を迎えていた。
まだ学校に行くには早いが、どうしようか。



「じゃあ、荷物取ってくるから部屋で待ってて」

「あ、うん」



いつの間にか俺の部屋についていたようだ。昨日のように悩むことなくドアノブに手をかける。室内はひどく静かで、今井が寝ているのは直ぐにわかった。
とりあえず忍び足で自室に入ると、今日から始まる授業のために準備を始めた。
スクールバックに教科書を詰め込んでいると、扉を叩く音がした。
早いな、なんて思いながら慌てて教科書を詰め込み扉を出る。そこに井藤の姿はなく、俺の知らない人物が立っていた。
先輩だろうか、新入生らしからぬ制服の着こなしだ。そして何より目をひいたのは顔面だった。絆創膏やらガーゼやらが当てられていて、ひどく痛々しい。



「今井いる?」

「え…たぶん居ます…」



居るかを確かめたわけでは無いので、俺は語尾を自然と濁す。ふーん、と呟いた男は、俺の横から部屋に入っていってしまった。
もしかしてあげない方が良かっただろうか。挙動不審になりながら辺りを見渡していると、奥の方から井藤が見えた。



「オルァァァア!!起きろやテメェ!!!」



室内から聞こえる怒声に、思わず扉を閉める。
あの声は先輩だ。たぶん喧嘩を始めたのだろう。バタンバタンと騒がしい。
怖くなった俺は、井藤の方へ駆け出した。俺に気付いた井藤は、目を丸くして俺の登場に驚いているようだ。



「あれ、良弘外出て待ってたの?」

「いや、その…」



どう説明すれば伝わるかわからなかった俺は、とりあえず先ほどあった事を全部井藤に伝えた。
すると井藤は、へぇ、と声をもらしたと思えばいつも通り笑顔を浮かべた。



「じゃあ今喧嘩してるんだ」

「う、うん」

「覗いてみる?」



冗談か本気かわからない言い方に、俺は慌てて首を横にふる。井藤は喉でくつくつ笑うと「冗談だよ」と言った。なんて質の悪い冗談だ。
しかし、放っておいていいのだろうか。未だに激しい音を出す扉の奥を想像しながら思う。
何事もないかのように歩き出す井藤は、「そのうち納まるでしょ」なんてなげやりな事を言った。
どうか部屋が倒壊してないことを願いながら俺は井藤の後をついていった。








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