「良弘、朝早いんだね」
「そうかな…」
井藤も人の事を言えないような気がしたが、俺は井藤を部屋にあげた。
興味津々といったように入ってくる井藤は迷うことなく俺の部屋に入っていった。
「どうしたの?こんな朝早くに…」
「ん?あぁ、ドッキリしようかなって思ったけど起きてたから止めた」
「ふーん…」
ど、ドッキリって。
どちらにせよ起きといて良かった。きっと今井と一緒に寝てる姿なんて見られた時にはあらぬ誤解を招いたに違いない。
井藤が俺のベッドに腰かけるのを見て、俺は床に座った。なんだか見下されてる気分になる。
「あ、今日一緒に学校行こ?」
「う、うん。じ、じゃあ朝ごはんも…」
俺が言えば、井藤は驚いたような顔をした。なんでだろうなんて思いながら見つめると、井藤は嬉しそうに目を細めた。
「もちろん!」
嬉しそうな顔をしながら井藤は首を縦に勢いよくふった。
そんなに過剰に反応しなくても、と思いながら俺はつられて笑顔を浮かべる。
暫くの間井藤と談笑を交わしていたら、いつの間にか6時過ぎになっていた。
「そろそろ飯食いに行こうか?」
「うん」
ベッドから腰を浮かせる井藤と共に立ち上がる。
部屋を出て廊下を歩いていても、まだ他の生徒は起きていないのか人気が少ない。
井藤が喋らないので俺も喋ることもなくなり、廊下には俺と井藤の足音だけが響いた。気まずかったが、俺は口下手だから面白い事を言う自信が皆無だ。ちらちらと井藤を盗み見れば気付いたことがあった。
俺よりも背が高い。
俺も低くはない方なのだが、差は歴然としていた。なんだかショックだ。
「ねえ良弘」
「な、なに?」
一人でショックを受けていたら声をかけられた。脇にいる井藤に目を向ける。笑顔だった。
「今井になんかされたりした?」
「え?なんで?」
驚きで少し声が大きくなる。
井藤は気にせず続けた。
「んー…なんとなく」
なんとなくか…。
何かされてない、と言ったら嘘になるのだけど。ベッドで一緒に寝たなんて言えないので、俺はとりあえずこの事を言わないことにした。
「…べつに、何もされてないよ?」
「ふーん…ならいいんだ」
井藤は文句ありげな顔をしていたが、特に突っかかっては来なかった。
何故こんな事を聞くのだろうか。俺を心配してくれているのかわからなかったが、何故か井藤の笑顔が怖い気がした。
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