目を開く。いつも見ていた実家の天井じゃないことに少し戸惑ったが、そういえば昨日から寮生活だった事を思いだした。
なんだか恥ずかしくなって体を起こそうとすれば、思うように動かない。え、なんで。って思って唯一動かせる首で辺りを見渡した。すると、俺のすぐわきに何か赤いものが視界に入った。
どんどん俺の体から血の気が引いていく。
もしかしなくてもそれは今井の髪の毛だった。
間違えてベッドに入ってきたのだろうか。俺の体をきつく抱き締めている。少し骨が軋むような感覚に俺は眉を寄せた。

(ど、どうしよう)

下手に起こしてボコられたりしたくはないが…。起こさなければこの男は昼まで死ぬように惰眠を貪りそうだ。
考えた末、起こさないように抜け出す事にした。先ずはこのきつく抱いている腕を離させようと手を伸ばす。
数分後、やっと腕が離れた。無駄に疲れた体を引きずり、布団から滑り出る。よっしゃ、と思ったのもつかの間、足を掴まれた。重力に負けた俺は昨日同様床にご対面した。鼻が痛い。
後ろを見れば、俺を掴んだまままだ眠り続ける今井が目に入った。なんてこった。
仕方ないから、手を離しにかかる。そしたら今度は手を掴まれた。そして引っ張られる。

(うわ…!!顔近い…!)

腕の中からまた出れなくなった俺はあたふたと焦るばかりで何も出来ない。すると、今井がうっすらと目を開いた。
やばい、起きちゃった。



「……」

「……」



今井と数秒間見つめ会う。
絶対おかしいと思ったけど今井が怖すぎたので俺は抵抗が出来なかった。
今井はまだ寝ぼけているのか俺を離してくれない。寝ぼけた顔も綺麗とか反則だと思う。



「……い、今井くん?」



沈黙に耐えきれなかった俺が口を開けば、今井はやっと俺の体から手を離した。というか突き飛ばされた。今度は頭を壁にぶつけて痛い。



「い…いたた…」

「て、てめえ…なんで人のベッドに!」

「え!ち、違うよ、これは俺のベッドだよ!」



何故か顔を赤くした今井にそう言えば、今井はばつの悪そうな顔をして舌打ちをもらす。俺は肩をびくりと震わせ、ビビってしまう。今井はそのまま俺の部屋を出ていった。

(こ、こわかった…)

でも、俺…反論なんてできたのか。一人自分に感心していると、ふと視線が時計に向けられる。時間はちょうど5時を回った頃だった。
少しどころかかなり早く起きてしまった。とりあえず制服に身を包み、洗面所で寝癖を直す事にした。一度も染めたりしたことのない髪の毛を、撫で付けて寝癖を無理やり矯正する。しつこい寝癖をやっと直した俺は部屋に入ると、時計に目をやった。
まだ20分。
確か、食堂が開くのは6時だ。
それまでの時間をどうするか悩んでいると、扉を叩く音が聞こえた。
こんな時間に訪問者か、と思いながら俺は扉を開く。



「おはよう」

「お、おはよう」



既に制服を身に着けた井藤が立っていた。








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