「あいたたた…」



俺が腰をさする動作をすれば、いち早く井藤が反応した。「ど、どうしたの!?」過剰な反応に少し引きつつ、今朝あったことを話した。

メイド服をやっとの思いで脱ぐことの出来た俺はそのまま寝てしまい、中途半端な時間に起きてしまった。寝過ぎたのか、頭痛がする頭を撫でながら覚束無い足で俺はベットから降りる。
否、降りるはずだった。
地についた足には思うように力が入らず、俺の体は後ろに倒れた。
がつん、と俺の腰とベッドの角がぶつかる鈍い音に、遅れてやってくる、広がるような痛み。今思い出しても自分の行動のアホっぽさに涙が出てきそうだ。

俺の話を聞いた井藤は、「メイド服着てみたんだ」等と論点とはだいぶずれたところに食いついた。俺がうん、と返すと、井藤は神妙な面持ちだ。



「同室の奴に見せたの?」

「ん?」

「メイド服姿」



同室の奴と言えば、言わずもがな今井だが、メイド服姿を見せたどころかチャックまで下ろしてもらった。だけど、それをいちいち井藤に言う必要も無いかな、と俺は首を横に振った。



「見せてないよ」

「そっか。よかった」



先程の顔が嘘のように笑顔になった井藤に、俺は苦笑いをこぼした。

文化祭まで日数も無いため、放課後はクラス総出で教室の飾りつけを行った。その間、意外とノリノリの西野が楽しそうにクラスメイトと笑っているのを見て、まるで保護者のような、生暖かい気持ちになった。
俺は井藤と共に教室の壁にはる、飾りを作っていた。
ざわざわしていた教室が更にざわざわする。
何事かと思えば、先程までクラスメイトと笑いあっていた西野が峯と共にメイド服を見にまとっていた。
化粧はしていないようだが、西野も峯も女の子に見間違えるほど美人だった。



「すごいね、二人とも。美人」

「良弘だって、あのくらい余裕だよ。今のままでも十分可愛いもん」



井藤は俺を買い被り過ぎだと思う。
俺なんかより、当然のように西野や峯の方が容姿に優れているというのに。そんなことを言う井藤が俺は不思議でたまらなかった。








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