順調に授業は進んでいき、気付けば放課後になっていた。
朝に思ったみたいに、平和な1日で良かった。と軽く安堵しつつ、峯と井藤と共に部室に向かった。

部室に入れば、米良さんと誰か知らない後ろ姿が見えた。
その背中がこちらを向く。俺は息が止まったような感覚に陥った。



「あれ、先輩…来てたんですね。お久しぶりです」

「おー峯ぇ。逸によぉ、新しい部員が入ったって聞いたぞ」



びくり、と肩が揺れる。新しい部員って、俺と井藤の事だよな。てかなんでこの人がここに…?
まさか、もう一人の幽霊部員って。



「鈴木、米良先輩じゃない方が灰野先輩。幽霊部員二人目」

「やっぱり…」



ちらり、と峯の後ろから灰野先輩の様子を伺う。先輩はソファーにもたれてトランプを机にぶちまけていた。「てめぇ、何三回も俺に勝ってんの」今にも米良さんに飛びかかりそうだ。それなのに米良さんはあはは、と笑った。



「藤は負けず嫌いだなぁ」

「俺が負けるなんてありえねぇだろ?だからてめぇは一発殴らせろ」

「えー、俺の顔が傷つく方があり得なーい」



米良先輩が無理のある高い声をあげた。灰野先輩は気持ちわりぃ、と笑っていた。格好いいけどやっぱり怖いから峯の後ろから出れなかった。
それを見かねたのか、峯がこちらに振り向いた。



「灰野先輩、そんな悪い人じゃあないから。そんなに怖がらなくて良いよ」



絶対嘘だろ、と俺は峯をじっとり睨んだ。
兎に角逃げ出そうと、俺は峯に断りを入れて部室から飛び出す。当分部活に行けなそうな予感がした。



「あ、鈴木ー」

「!?…あ、苑崎先輩…」



ビックリして思わず大袈裟に肩を震わせてしまった。最近自分のびびりが激しくなっている気がする。
苑崎先輩だと少し安堵して、苑崎先輩も充分危険なことを思い出して俺は気を引き締めた。とりあえず逃げられる隙を伺う。



「お前部活とかやってなかったっけ?んでこなとこ居んの」

「あ、いえ、別に…」



じりじり後退る。苑崎先輩は興味無さそうにふーん、と言った。そして何故か笑顔になった。「暇なら付き合えよ」何処に、と聞く前に、俺は苑崎先輩に腕を引っ張られていた。








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