肌寒さで目を覚ました。
微睡む思考の中で、目の前で揺れるくすんだ金髪が揺れた。
あれ、なんで金髪なんて。
「あ、起きちゃった?」
「米良さ、」
ん。を言い終わる前に、俺と米良さんの顔がくっついた。すぐ離れて、米良さんはぺろりと唇を舐める。真っ赤なそれはやけに艶かしい。
「鈴木は意外と大胆なのかな?ここが何処かわかって寝てるんだよね?」
「…?」
米良さんが言ってる事が分からない。
俺は目を擦って起きようとするが、米良さんが上に乗っていて起きることが出来なかった。
寝起きの頭は何も考えてはくれなくて、ただ米良さんの整った顔を眺めていた。
「めーぐるん?なーにしてるのー?」
聞き覚えのある声が頭上から降ってきた。
頭だけを動かして上を見れば、顔に点々と広がる絆創膏にガーゼ。
俺の思考は爆発的な覚醒を見せた。
「みのりんだぁ。おひさー」
「みのりん言うな。…で、お前は何やってんだよ。一年坊主を強姦か?」
「違うし、同意の上での行為だし。ここで寝てたんだから掘られに来た以外なにもないっしょ」
何やら不穏な会話を交わす二人。
と、いうか。
なんで俺は米良さんに組敷かれているわけ?なんかシャツのボタンも、申し訳程度にしかつけられていないし。寝始めた時はこんなのじゃなかったよな。
「…鈴木ぃ?お前、ここが何て呼ばれてるか知ってるか?」
「…?屋上じゃないんですか…」
「やっぱり」
呆れたように息を吐いた先輩が米良さんを退かす。米良さんは機嫌が悪そうに頭をかいた。
「あー、久々にノンケ食えっかなと思ったのにな」
「米良…おめー、やっぱり同意じゃないじゃねーか。鈴木」
「は、はい…」
俺はシャツをしめながら、警戒しつつ先輩に目をやった。
「ここ、ヤりスポットって有名なんだよ」
「や…?!」
「ここでは大体誰かがお盛んな事になってっから気ぃつけねーと食べられちゃうぞー」
え、だって。男子校なのに、ヤりスポットって、え?
混乱を隠しきれない俺を放って、先輩は米良さんを引きずって出口へと向かっていた。
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