「……お願いって何?」



とりあえず、内容を聞いてみる。
待ってましたと言わんばかりに、西野は笑みを深めた。
変な内容じゃ無いと良いんだけど。



「僕のな、セフレが一人いなくなったんだ」



セフレ…?
高校生にはあるまじき単語が今まさに西野の口から出てきたような。
新手の嫌がらせにしか感じられない俺は、既にげんなりしながら西野の次の言葉を待った。



「けっこう気に入ってたんだけどなぁ?」

「……」

「だから、鈴木にはそれの変わりになっ」「帰る」



西野を放って教室に戻ろうと踵を返せば、西野が慌てたように俺の肩を掴んだ。離せよ、という意味も込めて睨み付けてみるが、西野は軽薄な笑みを止めない。



「……もっと違うの無いの?大体、その"お願い"なら俺じゃなくてもいいじゃん。西野モテるでしょ?」



俺的正論を西野にぶつける。すると、俺の肩から手を退けた西野があぐねた。



「そうだけどよー、僕って博愛主義者じゃん?」



そんなものは初耳だ。
全く興味のない情報に、俺の口からは、はぁ、と気のない返事がでた。



「鈴木は俺が好きだろ?」「待って」



ちょっと。今なんて言ったのコイツ。
この間誤解といたじゃん。お前「フラれたの初めてー」とか言ってたじゃん。
それに井藤と付き合っている(設定)の俺が何でお前を好きになったりするんだ。俺、浮気とか絶対しないぞ?



「俺、井藤と付き合ってる」

「しってる」

「つまり俺は井藤が好きだから、西野を好きじゃない」

「それは違うだろ」



違くないよ!
西野の言葉全てが意味分からないという現象に陥る俺。西野はあれか、宇宙人か何かなのか?全く話が通じない。



「やっぱ僕がフラれるとかあり得ないっつぅか、…鈴木はあれだろ?井藤も好きだけど僕も好き、みてーな?」



勝手な解釈してんじゃねーよ。
到頭妄想まで盛り込んできた西野に、底知れぬ恐怖を覚えた。鳥肌を擦るが、一向におさまらない。



「だから、鈴木のためにも、お前の大好きな僕が相手してやるよ」








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