特に活動をするわけでもなく、ミーティングと称した自己紹介だけで部活は終了した。
米良は二年生らしい。この場合、"さん"とかつけた方がいいのだろうか。非常に悩む。
「じゃあね、良弘」
「バイバイ鈴木ー」
「あ、二人ともバイバイ」
いつの間にかついた自室に滑りこむ。あの二人、仲が悪いようで、そこまで悪くは無いようだ。
ベッドに座って、ここ最近の事を考えてみた。
入学して少したったが、まだまだ慣れないことだらけだ。とりあえず、苑崎先輩にだけは会わないように気をつけよう。
部活にも入ったし、案外充実した毎日が送れそうだ。これで、彼女なんていれば完璧なんだけどなぁ、と苦笑い。
「なに一人で笑ってんだ…」
穴の方から声が聞こえ、驚きながら目を向けた。
今井が頭を掻きながらこちらを見ていた。顔に絆創膏が数枚貼られている。
自分の痴態を見られた事も忘れて、その傷に釘付けになった。
「傷…ど、どうしたの…?」
「あ?あー…」
絆創膏を一撫でして、今井が言い淀む。
とりあえず、穴に近づく。男らしい顔には痣がちらほら見えた。
不良は不良らしく、喧嘩でもしたのだろうか。しかし、この学園に入学して、不良らしい不良は今井と、苑崎先輩くらいしか見たことが無い。他に不良なんているのだろうか。
俺が考えていることなど知らない今井は、俺にデコピンをした。
面食らう俺。それをみて吹き出す今井。
意味がわからない、と俺は首を傾げた。
「大した傷じゃねーよ」
ぽふん、と今井の大きい手が俺の頭をかき回した。
うまくはぐらかされたような、そんな気分。
するりと手は離れて行き、今井自身も何処かへ行ってしまった。
この学校に今井や苑崎先輩以外の不良はいるのだろうか。なんだか少しだけ気になる。
不良と関わりたくは無いが、こうも会わないと少し不思議だ。まぁ、会わない分には俺の運が良いのだろう。会ったら、下手したら絡まれるだろうし。
俺は特に考えない事にして、制服を脱ぎ始めた。
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