「…なんで、峯と良弘が一緒にいるの?」



暫し固まったあと、井藤はゆっくりと口角を持ち上げて峯に尋ねた。いつもの笑顔より、いくらか硬い。
峯は不適に笑うと口を開いた。



「なんでだろうね?」



井藤の眉間がぴくりと動く。
…なんだか、少し不穏な雰囲気だ。峯も井藤も口角は上がっているのに、目に隠った光が怪しい。
いつまでも睨み合う二人に、俺は暫し置いてきぼりをくらうが、峯が俺の肩を抱いたことによりそれは直ぐに終わりを告げた。
井藤の眉間に明確な皺が刻まれた。



「鈴木は、部活入ってくれるって。他の部員が知ったら喜ぶね?」

「お前…ふざけんなよ…」



井藤の目がみるみるうちに怒りで染まっていく。
初めて見た井藤の表情に、少し身体が震えた。それほど、井藤の顔には凄まじい怒りが浮かんでいた。



「ふざけてない。僕は至って真面目だ。そんなに心配なら、君が守ればいいだろ?」

「……」



峯を見据えた井藤は、俺の腕を引いた。簡単に俺の体は井藤に傾く。
思わず井藤を見上げたが、峯を睨みつけたままだったので視線が交える事は無かった。

それにしても、これは本当に勧誘なのだろうか。
峯の言動の節々には嫌みが滲んでいた。完全に喧嘩を売っている。
それを買ったのか、井藤も不敵に笑った。



「言われなくたって、そうするよ」

「じゃあ決まりだ」



峯は内ポケットから紙を二枚取り出した。
よく見れば、入部届けだ。
つまり、書けということか。



「明日、僕に渡してくれればいいから。じゃあ、鈴木バイバイ。明日部活来てね」



峯はそう言って隣の部屋に消えていった。
井藤と共に残された俺は、紙を握ったまま井藤を見上げた。井藤も俺を見下ろす。いつも通りの笑顔だ。



「俺が、良弘を守るからね」








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