次の日、体調不良で井藤が休むと言った。
メールでこの文を読み、昨日の元気な様子から、信憑性に欠けると思った。
まぁ、突然体調崩す事もあるだろうし、特に考えない事にした。




お見舞いにでも行こうか考えながら、俺は席につく。
隣の西野は当然のように居らず、今井の姿もなかった。
そうなると、この教室に喋った事があるクラスメイトが誰一人居ない事になる。自分の事ながら、この交流の少なさには引くものがあった。
今日一日独りかぁ、と頬杖をつきながら思う。今から友達を作るのも億劫だし、俺は一日を静かに過ごす事を決めた。
そもそも、昨日西野と共に授業をエスケープした時点で、俺に対する周りの視線は好奇以外の何物でも無いものになった。自らそれを浴びにいくような事をしたくはない。



「…ちょっといいかな」



まさか誰かに話しかけられると思っていなかった俺は「へ?」と間抜けな声をあげる。
話し掛けてきた人物に目をやれば、やたらと派手な服装をした人が立っていた。

所謂、V系だ。

トゲトゲした首輪や腕輪に、青みがかった髪の毛には紫色のメッシュが入っている。ネクタイは指定外のもので、眉辺りと口にピアスをしていた。
真っ白い肌と、目を囲むように施されたメイク、細い体の線、整った顔は、何故俺に声をかけたのか謎を一層大きくさせた。



「な、なに?」



辛うじて返事を返す俺、それを聞いた彼が俺に顔を近づけた。
カラコンなのか、左右の目の色が赤と黒で違う。
彼は薄い笑みを浮かべた。



「君、部活入ってないよね。と、言うか今井、井藤、西野、君だけが部活に入っていないんだけど、」



見事なまでに知り合いのオンパレードだ。
…今井が部活で汗をかいているイメージも無いが。



「是非ね、君に入って欲しい部活があるんだ」

「…え、でも俺部活に入る気とかあんまりないし」

「頼むよ、部員が足らないんだ」

「でも…他の三人に頼んだら…」

「井藤には断られて、西野と今井は論外」



ろ、論外なのか。
いつの間にか両手は強く掴まれおり、綺麗な顔がすごく近い。
何故か恥ずかしくて俺はとりあえず視線を彷徨わせた。



「放課後、少し見ていってくれよ。考えるのはそれからでも遅くないだろう?」



結局俺は彼の熱意に負けて、放課後見学に行く約束をしてしまったのだった。








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