「そういえば、」



俺は不意に思いだし、口を開いた。



「昨日さ、夜とかに俺の部屋来た?」



確信は無いため、俺は疑問系で尋ねた。
すると、井藤はコテンと首を傾げた後、ふるふると首を横に降った。
俺は多少の驚きを感じ、それを落ち着かせるように「そっか」と呟いた。
では、昨日俺に訪ねて来たのは誰だったのだろう。
友人と呼べる人物など、井藤以外にはまともにいない。
少し不思議な出来事に、俺は思わず黙り込んでしまった。頭の中で悶々とあらゆる可能性を考えてみたが、どれもしっくりとは来ない。



「良弘、部屋ついたけど?」

「へっ?」



井藤に肩を叩かれながらそう言われ、俺は弾かれたように前を見る。
ついさっきまで校舎だったのに、いつの間にか寮の廊下だった。
俺は一言井藤に謝罪を入れ、部屋へと滑りこんだ。


部屋には今井は居ないようで、やけに閑散としていた。
特に気にすることもなく、俺は自室に入った。



「………は?」



思わずもれた声は、部屋によく響いた。
肩にかけた鞄がずり落ちたのを感じつつ、俺はそれに歩み寄る。

俺のベッドで寝ている、そいつに。

見覚えのある銀髪と、たくさんのピアスに綺麗な顔。隣の席の、西野だ。

(な、なんでこの人ここで寝てんの…?)

ベッド近くにとりあえず座った俺は、綺麗な顔を眺めていた。一度も喋ったことのないクラスメイトが、自分のベッドで寝ているというのは少し変な感じだ。
とにかく、俺は西野が起きるのを待つことにした。






「ん……」



肩を揺すられたことにより、俺は目覚め、しょぼつく目を無理矢理開いた。
そういえば、西野が起きるのを待っていたんだった。
俺は慌てて飛び起き、辺りを見渡した。



「お、起きた」



揺れる銀髪、初めて聞いた西野の声はやけに耳に残るものだった。
寝起きで回らない頭も相まって、俺はどんどん混乱していく。



「寝ぼけてんの?おーい」



目の前で振られた手により、やっと覚醒した頭をフル回転し、俺は口を開いた。
やけに近い綺麗な顔が、心臓に悪い。



「な…なんで、俺の部屋にいるの…?」



当然の疑問を口にすれば、西野は一瞬キョトンとした後、ニッコリと微笑んだ。



「アンタ、鈴木でしょ?僕は隣の席の西野」

「は、ぁ…」

「一目惚れでしょ」








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