行動が人をつくる、というのも、ある種真実だとバッツは思う。
気ままに動き回る肉体が、雨風に弄ばれ、流れるままに生きてきた旅人という生活が、奔放なるこの魂を作ったのだと言われれば納得できそうな自分の性格が証拠にもなる。
だからこそ、ユウナには笑って欲しくなかった。
小さな背中はどう考えても泣いていたのに、振り返った彼女のいつもの柔らかい微笑が、どうしようもない感触をバッツに与えた。

「バッツさん」
「バッツだってば」
「そうだったね、バッツ」

何度目になるか分からないやり取りの後で、バッツはユウナに座ることを促して、自分も隣に座った。
ここはユウナとジェクトのいた世界の断片で、闘技場だと言っていた。
朽ちかけた座席に並んで座って、自然に置かれたユウナの手に、バッツは手を重ねた。
さあ、驚けばいい。

「どうか、した?」

ふわ、香る笑顔には一つの陰りもない。
ぴくり、確かに跳ねたはずの手は、その驚きを微塵も伝えない。
一つ目の当て外れでは落ち込まない。
じゃあ次は、怒ればいいんだ。

「無理に笑うのは、嫌いだ」

しかし、当たり前だが、バッツの感性がユウナにとって人質になるわけがない。
ユウナはくすくすと笑った。

「そうですね」

それは嘘ではなさそうだが、面白い結果とは言えなかった。
バッツはぎゅっと手を握った。

「人は、そんなに優しくないよユウナ。自分を、どうして守ろうとしないんだ」
「違うよ、バッツ。私は、私を守るために行動してる」

臆することなく、ユウナはバッツを見る。
真っ直ぐ、真っ直ぐ。
バッツとて、負けるわけがない。
兄のような顔をして、それを受け止める。

「そういう形でしか、守れない自分なんです」
「頑固者」

そうして、わぁ、と襲い掛かるバッツの両手に、ユウナは笑い声を上げる。
乗せられるようにしてバッツの大きな手はくしゃくしゃとユウナの髪をかき乱す。
全てくしゃくしゃになって、慕わしい、じゃれ付いた感情になって、押し流してしまえばいい。
そんなに笑いたいなら、せめて心から。
いじましいやつめ、頑固な、強すぎる、いっそ馬鹿馬鹿しい…。
強引に頭を引き寄せる。

「キスしていい?」

食べちゃいたいから。
しかしそう言う顔はいっそ情けないまでにやせ我慢の笑みで、つられたようにユウナの寸止めの唇が、桜色に動く。
綺麗な眉も、少し八の字。

駄目です。




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