戦士としてはあまりに細く幼い体を、バッツは抱き締めた。
壊れる心配と失う恐怖は半分半分。

「ね、痛いよ、バッツ…」
「ごめん…」

腕の中でオニオンナイトは静かに喘ぐ。
体力など尽きたどころか、マイナスに向いているだろうに、彼はただ、情けなく涙を溢すこの年上の男を慰めるためだけに正気を保っているのだった。
バッツはその淡い少年の微笑みと、血に濡れた体にありったけの涙と回復の魔法を注ぐ。

「傷、塞ぐくらいでいいんだけど…」

オニオンナイトの掠れた言葉にバッツはいやいやをするように首を横に振って、なおも魔法を続ける。
その頬を滑るのは、涙だけでなく汗も。

「お前が、お前がこんなめに遭っちゃいけないんだ、そんなのは、そんなのは絶対駄目なんだ」

子供のような言葉を繰り返す男に呆れたのか、それとも本当に体力も気力も尽きてしまったのか、オニオンナイトは目を閉じた。
バッツは益々強く抱き締めて、頬に頬を寄せた。
確かにそこは冷たいが、死に行くもののそれではない。
幼くまだ柔らかい首筋に唇を当て、静かに脈を測る。
いち、に、さん、し…自分の心臓のリズムと比較して、問題のないことを確認する。
規則的な息遣いも、バッツの耳をくすぐった。
漸く得られた安堵で、バッツは涙を拭い、オニオンナイトを膝から下ろした。
優しく横たえ、外した己のマントを上にかける。
それから少年の秀でた額に一つ口付けて、立ち上がった。
瓦礫を浅く組んで、オニオンナイトを隠す。
さて、と笑んだ口元はいつものようだ。
癖にすらなった楽しげな空気は、それでも鋭く尖っている。
弾む足取りでその場から離れ、向かい合うのは敵の群れ。
ああ。
笑ったまま、膨れ上がる怒気。
意識と呼応するバスターソードとガンブレードが左右それぞれに現れる。
触れてリーン、と鳴いたのは、高く澄んだ理不尽への怒り。

「お前ら、覚悟、…なんてないか」

独り言ちた口元にはもう笑みはない。
ただ旅人の足はもう、戻らない時間と終わらない戦いを蹴散らして、走り込むばかりだ。




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