浦原商店に戻ってこれた頃には昼を少し過ぎていた。

「今までどこ行ってたんスか?」

戻ってきてすぐ浦原に恨めしげな目を向けられた。

「どこに行ってたかなんて知ってるわけねェだろ」

そう言って顔を背けると、「そっスよね…知ってたら迷いませんもんね……」とため息がちに声を漏らした。

「あ、あの…」

浦原とのやりとりのさなか、おずおずと第三者の声が聞こえた。

「あ?」
「あー、そうそう。誰かさんのせいで紹介が遅れてしまった四番隊の支援者ッス」
「てめぇ喧嘩売ってんのか」
「別に更木サンのせいだなんてひとっことも言ってませんよアタシは」
「あぁ?」

明らかにこちらを煽っているとしか思えない浦原の言葉に少しカチンときて睨みつけるが向こうは涼しい顔で口笛を吹いている。
そんな不穏な空気を感じとったのか、慌てた様子で小さい身体が間に割って入ってきた。

「べ、別に大丈夫ですよっ!更木隊長もお気になさらないでくださいっ!」

小さいながら必死になっている青年に目をやると、それは最近なにかと絡むことの多くなった四番隊の三席、山田花太郎だった。

「……なんだ、山田じゃねぇか。てめぇが来たのか」
「あ、は、はい!精いっぱいの後方支援をさせていただきます!」
「おー」

山田とのやりとりに浦原が驚いていた。

「なんだその顔は」
「……更木サン、山田サンのことご存知だったんスね…」
「まあな」
「てっきり知らないかと思ってました。四番隊の方のことも知ってらっしゃるんですねぇ」

感心感心、と胡散臭さ溢れる笑顔を見せた浦原に舌打ちをしたあと、やることもなくなったのでまた散歩にでも行くかと踵を返した。

「あ、あの…更木隊長?今、お時間よろしいですか?」

恐る恐る話しかける山田に「なんだ」と返すと、ホッとしたように話し始めた。

「先日虚の襲撃を受けたと聞いています。その際負傷したとも……浦原さんは傷を塞いだだけだと仰っていたので、その…更木隊長がよければ、傷を見せてもらえないか、と……」
「必要ねェ。治った」
「ぅ…はぃ……で、ですよね……差し出がましい真似してすみません………」

見るからに凹んだ山田と、俺の面倒くさそうな顔を見比べた浦原は山田側についたようだ。

「更木サンその言い方はないッスよ。花太郎サンにお仕事させないつもりですか?」

ジトリとした目で見られて少し考える。

「仕事がねェならそれに越したことはねぇだろ」
「花太郎サンが来た意味がないって言ってるんスよ。…全く。花太郎サンは貴方が万全の状態で敵と戦えるよう派遣されたんス。虚の攻撃は少しの傷でも毒になる場合があるんスよ。だからこそ、これから虚に受けた傷は専門家に診てもらってください」

ね?と目元を帽子で隠して笑う浦原に「めんどくせぇな…」とボヤきつつ、山田の方を向いた。

「……」
「……?あ、あの……?」
「戦えねぇのは困るからな。傷、見せてやる」
「え…あ!!は、はい!」

凹んだり笑顔になったり(冷や汗は何故かずっと流れてるが)……コロコロと表情が変わるやつだなと思いつつ、山田とともに部屋へ向かった。

「……なんで治療される側の更木サンのほうが偉そうなんスかねェ」

続く。



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