「学祭?」

そう、と拓海は楽しそうに話し始めた。

黒咲工業は鈴蘭と違い共学だ。
そして、今年は例年に比べ女子の数が多いらしい。
その女子ほぼ全員から「なにか盛り上がる行事がないと楽しくない!」との意見が上がり、黒咲工業開校以来初の学祭が明日執り行われることになったのだそう。

「おお!そーいうのなんか楽しそうだな!」

花はもう行く気満々。

「屋台とかあんのかな?何か必要なものとかあんのか?」

と質問攻めにしている。
それらの質問を1つ1つ律儀に答える拓海に「でもさー」と寅が声をかける。

「俺らまで行っていいの?拓海っちゃん」

まぁ最もな質問だな。

「ええっ!?行っちゃダメなのか?」

お前はどんだけ行きたいんだ。

「俺らは鈴蘭だからな…喧嘩はするなってほうが無理だろ」

諦めろ、蓮次が落胆してる花の肩をポン、と軽く叩いた。

「ああ、その辺は大丈夫。そもそもこの学祭、取り仕切ってるのが女子なんだ。うちの女子はけっこうカワイイ子が多くてさ…その子達が『喧嘩する幼稚な男子は恋愛対象外』って言い放ったもんだから」

喧嘩ふっかけるやつなんかいないと思うよ、と拓海はクスクス笑った。
黒咲ってことはアイツもなにかやるんかね。
先週会った時にはなにも言ってこなかったが…。

「学祭か…俺も行きてぇな…」

ポツリと独り言を呟くと、それが聞こえていたらしい拓海がニヤリと悪戯を思いついたような笑みを浮かべてこちらを見ていた。

「…なんだよ」
「…迫田にはあとでいいこと教えてあげる。多分迫田にとってはうちの女子を見るよりいいものだから」

そう言って軽くウインクした拓海に俺は若干引きつつ「…おう」と返事を返した。

その後。

「俺ら女装メイドカフェやるんだけどさ、アイツがメイドの格好するんだ」

試しに着せてみたら可愛かったらしくて、と寝る寸前で爆弾を投下した拓海。
おかげで俺はイケナイ妄想ばっかしちまって…気付いたら朝になってた。

「なにしてんだ俺は…」

軽く自己嫌悪だ。
部屋を出ると拓海とばったり会ってしまった。

「…よく眠れたみたいだね」
「皮肉かよ」

ばっちり隈のできたこの顔を見てよくそんなこと言えるなテメーは。
はぁ…とため息をつきつつ今日の学祭へ向かう準備を始めることにした。




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