学祭は意外と盛り上がってた。
「意外と混んでるな」
隣にいた蓮次も驚いているようだ。
「焼きそばー!」
「ちょ、待ってよ花ちゃん!」
花は焼きそばの匂いにつられて猛ダッシュで走って人ごみに消えた。
慌てて追いかける寅も同様だ。
「花のヤツは寅に任せときゃいいだろ」
ちょっと見て回ろうぜ、との蓮次の提案にまだアイツに会う心の準備ができてない俺は「…そうだな」と返した。
屋台に並んでたものを片っ端から買って食べていたのであろう、口の周りをこれでもかと汚している花と、一体なにがあったのか聞きたくなるほど疲れきった寅の2人と合流して、拓海たちのやっているカフェにたどり着いたのは、お昼のピークを過ぎた午後の頃だった。
「…昼のピークは過ぎたんじゃなかったのかよ」
前日に拓海から指示された場所に向かうと、そこはたくさんの女子とその黄色い声で大いに盛り上がっていた。
「たくみー!」
花が負けじと大きい声で拓海を呼ぶと、今まで笑顔だった女子が勢いよくこっちを睨みつけてきて、思わず後ずさってしまった。
「お前ら!来てくれたのか!」
こっちこっち、と手招きする拓海。
「何してたんだ」と尋ねると、「写真撮影だよ」と先ほど撮ったであろう写真を見せてきた。
拓海と…ここの女子どもの誰かだろうか。
「…これも売ってんのか」
「もちろん」
ニコリと笑う拓海。それを見てまた黄色い声援が飛ぶギャラリー。
…これは売れるだろうなぁ。
格好も…たしか、ぎゃるそん、だったか。
顔がいいからこういうキチッとした格好すると様になるんだよな。こいつは。
「拓海くんっ!向こうのお客さんが…」
不意に聞こえた声に振り向くと。
「……あゆ、み?」
「っあ…!た、武文くんっ!?」
驚きと恥ずかしさで顔が真っ赤になった歩巳。
そりゃそうだ、来るなんて言ってねーし。
それにしても可愛い。
なんだこの可愛さは。
ふりふりのエプロンみたいなドレスに膝を隠すくらい長い靴下。
下着側からベルトみたいなもので靴下が落ちないよう固定してるらしい。
それがまた煽られる。
薄く化粧も施されていて頭にはカチューシャも。
「ぅ…あ、あんまり見ないで…恥ずかしぃよ…」
モジモジする歩巳。
やべえ、理性がプッツンしそうだ。
「歩巳、そこに突っ立ってる強面のお客さんエスコートしてあげて」
耳に入ってきた拓海の言葉でようやく我に返った。
目の前には相変わらず可愛い格好の歩巳がいる。
「ご、ご案内します…ご主人様」
顔をうつむきがちにしつつ、こちらを見上げるその視線。
あー、もう我慢出来ん。
「拓海、こいつ持って帰るわ」
俵みたいに歩巳を担ぐと「ひゃぁっ!?」と間抜けな声。
「…無理させるなよ」
「約束はできねぇ。じゃ」
はぁ、とため息をつく拓海を尻目に廊下にでた俺は、未だ肩の上で無駄な抵抗をしてる歩巳を横抱きに持ち替えた。
「暴れんな」
軽くキスをすると赤い顔を更に赤くして大人しくなる歩巳。
「っ、…ず、るぃよ」
少し涙目な歩巳にまた欲情しながら、廊下の奥のあまり使われてなさそうな男子トイレ、その個室に入りカギをかけた。
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