虎徹を抱えた更木が四番隊隊舎へ到着するや否や、虎徹は担架で処置室へ運ばれていった。
更木のほうもそれなりに傷を負っていたのでついでにと治療処置を施されていたが、特に重傷でもなかったためすぐに終了した。
そしてそろそろ一角たちも戻って来る頃だろうと思った更木が部屋を出たその瞬間、それまで安定していた虎徹の容態が急変した。

「ッ!はァ、はァ、ぐっ…ぅ…ぁ、ハ…っ」
「呼吸困難を起こしています。すぐに酸素吸入を」
「はいっ!」

聞こえてくる慌ただしい声を余所に、更木はのんびりと自隊へ足を進めていた。
もう少しで詰所内から出られる、というところで卯ノ花に呼び止められたのだ。

「更木隊長」
「んぁ?なんだ」
「処置室へお戻りを」
「俺の治療は終わったぞ」
「えぇ、確かに。しかし勇音の治療が終わっておりません」
「関係ねェよ」
「…もし勇音が息絶える事があれば、十一番隊への後方支援及び救護活動を著しく制限せざるを得ませんね」
「なんでだ」
「貴方がた十一番隊の支援をしていたが故に勇音は戦い、傷つきました」
「……」
「貴方がたが前線にて虚を取り逃すことがなければ、件の虚が勇音の腹を貫くことも、そもそも刀を抜いて戦闘行為に及ぶこともなかったということをお忘れなく…」
「……チッ、めんどくせぇ…行きゃあいいんだろ」
「ご理解頂けたようでなによりです」

そう言って微笑んだ卯ノ花に連れられた更木がともに処置室へ戻ると、静かに寝息を立てる虎徹とその姿に驚いている四番隊隊士がいた。

「勇音の容態は?」
「それが…今急に呼吸が落ち着いたんです」

困惑した様子の隊士と、それを聞いて考え込む卯ノ花。
更木からすれば虎徹の姿は連れてきた時と何ら変わらないので、訳が分からなかった。

「なんだよ、じゃあいいじゃねぇか」
「……いえ、貴方はもう暫くこちらに留まっていてください。私はこれから行く所がありますので。…せめて私が戻ってくるまでは」
「……戻ってくるまでだからな」
「えぇ。お願いします」

そう言って卯ノ花が虎徹の右腕から血液を採取して部屋を出ていったのが数時間ほど前。



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