目を開けると見慣れた部屋の見慣れない光景が目に飛び込んできた。
枕に頭を置いたままキョロキョロと周囲を見渡し、おもむろに右手を頭上にかざした。

「……、い、きて、る………?」

腕に巻かれた包帯が痛々しい、と他人事のように思う。
全身が軋んでいるように感じるが、ひとまず生きてはいるらしい。
ふぅ、と大きく息を吐き出し、包帯の巻かれた脇腹にそっと手を伸ばした。

(……少し痛む、けど)

起き上がれない程ではない。
「よし」と小さく気合をいれてゆっくりと身体を起こした。

「っ、とと……」
「おい」
「ひぇッ?!?……ぁ、え、?きゃっ…!」
「寝てろ」

いつの間にか寝台横に男が座っていて、せっかく起こした身体を再び寝台へ倒されてしまった。
大人しく座っているその姿があまりに似つかわしくなくて、暫く思考が停止していた。

「……」
「……」

しばらくお互い無言だったが、とうとう沈黙に耐えきれなくなってきた。

「あ、あの…」
「なんだ」
「……どうして、ここに?」
「知らん」
「…へ?」

相手の予想外な返事に思わず間抜けな声を出してしまった。
その声に心底面倒そうな顔をして「知らねェもんは知らねェんだよ。後で卯ノ花にでも聞け」とだけ言って、寝台に凭れるようにして背を向けてしまった。
これ以上はなにを聞いても答えてくれないだろうと判断し、眠るために大人しく目を閉じた。

(……あれ…なんでだろう…)

息も詰まるほど重くて濃い霊圧を普段から垂れ流しにしている彼。
普段はなるべく避けるように(もしくは卯ノ花に任せたり)していた虎徹だったが、今は何故かその霊圧が傍にあることで安心感を覚えていた。

(卯ノ花隊長なら…原因…分かるの…かな………)

微睡む意識の中そんなことを考えているうちに、虎徹は意識を手放した。



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