あの眼が好きだ。
最初に出会ったときの強い光を宿した眼。
喧嘩の最中に見えた好戦的な眼。
最後のタイマンで決意に満ちた眼。
久しぶりに会った時の嬉しそうな眼。
ヤってる最中に見せる情欲に満ちた眼。
仕事が続き、やっと帰れたときに見せた寂しそうな眼。
目は口ほどに物を言うとはこのことか、と思えるくらい素直に感情を表す眼。
そんな眼が好きだ。


顔も好きだな。
何かを企んでいる時の悪い顔。
喧嘩をしてるときの楽しそうな顔。
高校の友人と電話してるときの笑顔。
美味いものを食べた時の幸せそうな顔。
たまに素直になったあとの恥ずかしそうな顔。
酒を飲んで酔っ払ったときの甘えたな顔。
稀に見せる真剣な顔。
毎日色んな顔を見せてくれるから全然飽きない。
ただ、1つだけ。
泣き顔だけは苦手だ。
できればずっと笑っていてほしいと思う。


男らしいところも好きだ。
喧嘩は強いし、女子供に優しい。
友人や兄弟分のためならどんなことがあっても駆けつける。
だからなのか、一匹狼を自称してるわりに友人が多い。
そして良くも悪くもまっすぐだ。
こうと決めたら突っ走る。
誰にも追いつけないスピードで、ひたすら走る。
手を伸ばせば届きそうなのに、届かない。
だから憧れるんだろうな。
そんなあいつが背中を預けられる存在になれたことが嬉しいし、これからもそうありたいと思っている。


それと…そうだな。
一緒に住み始めてから初めてわかったこともある。
家事が一通りできるのには驚かされた。
一人暮らしが長いってのもあるんだろうが、普段は生活感の欠片も見せないもんだから、冷蔵庫の残り物で料理を作り始めたときはなんの冗談だと思ってしまった。しかしできたものがとても美味かったので、その日以降料理はあいつがよく作るようになった。休みの日は俺が作るが。
あとは…ふふ、ホラーものが苦手だな。
見たがるくせに、いざ見ると怖がって画面を見ようとしない。
それでも気になるのか薄目で見てるんだが…その時の顔が…思い出すだけで笑えてくる。
本当に飽きないし、未だに新しい一面が見れたりするから面白い。




だがもちろん欠点もある。
なにかに夢中になると全然耳に届かない。
この間ゲームに熱中しすぎて俺が作った昼飯に手をつけてなかった。
だから夕飯はあいつの嫌いなトマトだらけにした。
泣きそうな顔で謝ってきたので流石に許したが。
あとそうだな、いびきがうるさい。
寝言もうるさい。
たたき起こしてやろうかと毎回思うんだが、寝顔があまりに幸せそうでな…。
外れた音で急に歌いだすのも勘弁してほしい。
楽しそうに歌わないでほしい。
こっちも楽しくなってしまうから怒れなくなる。
キザでカッコつけなのもどうかと思う。
そんなことをしなくても……いや、なんでもない。
意地っぱりで見栄っぱりだから話を大げさにするところも欠点だ。
一般人から見りゃ大げさにする必要が無いほど凄いことやらかしたりするからな…。
それと、嘘をつくのがものすごく下手くそだ。
気づいてほしいから分かりやすい嘘をつくのかと最近は思いはじめてる。
なにせあいつは素直じゃないからな。
他人に無関心だった俺が欠点を見つけられるほど長く一緒にいるんだ。
下手な嘘くらい見抜けるさ。


俺が今こういう生活をしてられるのは、あいつのおかげだと思ってる。
あいつの強さと自由さに、その全てにどうしようもなく惹かれた。
あの時、出会ってなかったら。
きっとこんなふうにはなってなかっただろう。



ただな、初対面の相手に人殺しかなんて聞くその無神経さはどうにかしたほうがいいぞ。
あれはさすがの俺も許してねえからな。


おしまい。




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