真喜雄さんはいわゆるブラコンだ。
会うたびに弟の写真を見せては「可愛いだろー」と自慢してくる。
俺と1つ違いの男の写真を見せられて「可愛いですね」なんて言えるわけもなく、毎回適当に笑ってごまかした。
そんな真喜雄さんが、最近会ったとき珍しく凹んでいた。
この人が凹むのは大体弟が原因だと、短くはない付き合いで学んだ。
聞いてみると、やっぱり「末の弟に嫌われた…」とのこと。
そういえば次男の竜也は写真でよく見せられるし、実際に会ったことも喧嘩したこともあった。
だが三男もいるとは初耳だ。

「まだ弟いたんですね。会わせてくださいよ」

冗談交じりで言うと、「ダメ!絶対ダメ!!」とわりかしマジなトーンで拒否された。
あまりに必死の形相で若干引いた。

「この間お前の写真見せたら、目をキラキラさせて『会いたい!』って言い出してよ…」
「ちょっと待て、あんたいつの間に俺の写真なんか」
「(無視)すげー可愛かったんだけど、ダメだって言ったら涙目で『兄ちゃんなんかキライ!だいっきらい!』って言われて…」
「聞けよ」

いつもこうだ、弟の話になると人の話なんか全く聞かない。

「でもお前に会わせたりなんかしたら絶対懐くじゃねーか!それだけは阻止する!!」

弟を奪われてたまるか!と言わんばかりだ。
そこまで言われてしまってはますます会いたくなるものだが、その日のところは我慢した。


後日。

「秀人ぉぉぉ!!会ってやってくれぇぇ!じゃねーと俺一生嫌われる…」

と本気で泣きそうな(泣いてたかもしれない)真喜雄さんに迫られて会うことになるのだが。



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