成瀬明
カランカラン



「名前ー!聞いてよもうっ!」

「成瀬さん、いらっしゃいませ。」




成瀬明さん。
店の近所に探偵事務所を構える常連さん。


もともと私が店をオープンした当初に、成瀬さんに依頼をしたのをきっかけにうちに来てくれるようになった。



「名前ー!聞いてよ!!」

「青山さんですか?」

「そう!そうなのよ!!あ、その前にホットひとつ!あと今日の日替わりケーキもね。」

「かしこまりました。」



お仕事の合間だったり、OFFだったり、暇を見付けては通ってくれる成瀬さん。

うちのコーヒーやケーキを楽しんでくれているのだけれど、お姉ちゃんと話しているようで私も女子会気分で成瀬さんが来てくれるのを楽しみにしている。


会話の内容は様々だけれど、やっぱり1番多いのは『青山さん』。




「それでね、さっきマトリまで行ってきたんだけど、青山ったら警視庁のほうに会議で行ってるから居ないって言われて!だから警視庁の方に行ったら行ったで追い返されるし!!もうっ!!アタシが何したって言うのよ!!」

「ありゃあ・・・。それはそれは・・・。」


むしろ捜査協力でたびたび厚労省に出入りできるだけですごい・・・!

成瀬さんって、いつも青山さんの話だし言葉遣いも女性的だからついつい忘れちゃうけど、成瀬さんもめちゃくちゃお顔が良いよね・・・!!
それにそれに、流石というべきか指の先から髪の毛まで隅々までお手入れされてて・・・

女としても負けてる気がする!!!



「ちょっとお、名前、聞いてる?」

「!聞いてますよ。新しく投稿するメニューですよね?」

「そうそう!・・・でもその前に、アンタの話を聞かせてちょうだい。」

「え、私ですか?」

「そうよ!探偵を甘く見ないでちょうだい!仕事を大事にしてるアンタが接客中に考え事なんて珍しいじゃない。どうしたの?」



さすが・・・!
でもそんな大した事じゃなくて、


「いえ、ただ、」

「ん?」

「成瀬さんの手が、綺麗だなあって。」

「アタシの、手?」

「へへ、ほら、私の手は水仕事でガサガサですから、素敵だなあって。」

「・・・。」


頑張って仕事をして、お客様に喜んで頂いてる証だから嫌いじゃないけどね。
やっぱりふとした時に気になるな。


「ちょっと手、貸しなさい。」

「え、成瀬さん?」


ひょいと手を取られて、何かを付けられる。


「アタシの秘蔵のハンドクリームよ。水仕事しても簡単には取れないわ。無香料だし、仕事にも影響しない。アタシもいつも使ってるの。」

「っ、成瀬さん!」


クリームを塗り込むように、成瀬さんの綺麗な両手が私の手を揉む。
ちょっと、刺激が強すぎですって、


「できたわよ。」

「っ、」

「アンタの手、アタシは好きよ。」

「、成瀬さん・・・。」

「こぉんな小さな手で、美味しいものを産み出すんだもの。すごいわ。」



もおおお!
どんなサービスなんですか!!
ほんと、成瀬さんが青山さんが好きって分かってても照れちゃうよ!

頬が燃えるように熱くなるのを、感じる。


「ふふっ、名前、真っ赤。」

「・・・青山さんは良いんですか・・・。」


せめてもの仕返し。
でも、それさえも





「あら、アタシ、女の子だったら名前が1番好きよ?」





名探偵は一枚も二枚も上手なようです。

・・・またのお越しを、お待ちしてます・・・。








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