一番高い棚からファイルを取ろうと手を伸ばしたが、届かない。爪先立ちしてみるが、触れはするものの、取り出せない。本の背を撫でるばかりで、もどかしい。遂には飛び跳ねてみた。けれども、結果は同じだ。むなしい。


「なにやってんだよ」


頭から降ってきた声に振り向けば、サボがひょいとファイルを取り出していた。頬がその胸板にやんわりと押された。離れようにも、気づかぬうちに本棚との間に挟まれてしまっていた。不覚である。


「ほら」

「あ、うん、ありがと」

「どういたしまして」


手渡された青いファイルを腕に抱いて、口の中でもごもごとお礼を言った。緊張で体が縮こまる。


「あの、サボ、腕……」

「ん?」


逃がさないようにしているのだろう。サボは本棚に手をついて、ニコニコしていた。小さな体はサボの腕の中にすっぽり収まってしまっていた。体格差がありありと現れている。袖が巻かれて露わになっている腕には筋が浮いていた。


「人が、来ちゃうよ」

「別にいいよ」


彼は、体温が高い。腕から、僅かに開いたシャツの襟元から、彼の熱を感じた。それだけ、距離が近かった。眩暈が、した。


「ひゃっ」


ちゅ、と耳の中に響いた音。それだけではすまない。おかしな感触がした。熱い吐息を漏らしながら、柔らかな何かが入り込んでくる。


「あっ…やあ、あ、サボ…、だめ」

「気持ち、良さそうだね」

「や……あっ」


優しく探る。時折吸い上げる。舐める。離れる。また犯す。サボの左手が服の上をまさぐっていた。指先が、柔らかな肉の中に沈む。快楽を教え込むように、指は動いた。


「ここで抱かれたい?」

「あ………」


硬くなったものを押しつけられた。サボの眼は、こわかった。食べられてしまうと思った。


「サボ……」

「なに」

「ん…もっと……して」


青いファイルは理性と共に地に捨てた。サボの首に腕を絡めて、キスをねだる。服の中に入ってきた手は、異様に熱かった。


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