「あの子のどこがいいの」

「少なくとも、あなたとは違いますね」


ラフィットはピシャリと言い放った。
ああ、なんて不愉快なのかしら。私は、今までラフィットに、様々な罵りの言葉を投げかけられてきたけれど、ここまで嫌な気分になったことはなかった。
傘の柄を強く握って、私は、顔を歪めていた。


「どうしてあんな子供が良いのよ。あんな貧相な体で、あなたを満足させられるわけないじゃない」

「下品ですよ。大体あなたが考えているようなことはしていません」

「性の対象じゃないなら、なんのためにあの子を側に置いてるの?」


わけがわからないわ。
そう呟けば、ラフィットは。


「あなたが知ってることが全てだなんて思わない方が良いですよ」


それって、つまり、あなたにとって、あの子は恋愛対象にはならないってこと?近くにいて、欲情しないっていうことはそういうことじゃないかしら?まさか、純愛だのなんだのなんて言い出す気じゃないでしょうね。ぞっとするわ。


「だけど、ラフィット。あなたがあの子を見る目は、まるで………」


飢えた彼の目を、私は知っている。また、欲を吐き出した後の彼の興醒めしたような瞳も、私は知っている。思い出した途端に、ずくずくと下腹部が熱くうずき始めた。浅い呼吸を繰り返して、彼を見つめた。


「ねぇ、ラフィット……」


私は欲に濡れていた。彼の開いた胸板に触れる。


「抱いてよ。私、あなたに抱かれたいわ。何でもしてあげる。どんなことだって、受け入れるわ。それに、私なら、あなたを満足させてあげられるでしょ?」


縋るように抱きついた私を、ラフィットはせせら笑った。


「ホホホ、いつになく必死ですね。発情期ですか?」


蔑むような眼差しにゾクゾクさせられる。胸の先が堅くなっていくのを感じた。


「優しくしてくれなくてもいいの。愛してくれなんて言わないわ」


あの冷たくて乱暴なセックスが欲しい。人をまるで人形みたいに扱う、あの一方的で淡白なあなたのセックスが、私は愛しくてたまらない。体は繋がっているのに、心が途絶えているあのむなしささえ愛しい!あなたが誰を求めていようとも、かまわない。あなたが私に触れるだけで、それだけでいいの。


「誰の代わりでもいいわ」


そうして、あなたは、私をたくさん傷つければいい。あなただってただじゃすまない。


「本当に、どうしようもない女ですね」


私を傷つけるあなたを、私は、愛してる。



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