「おはよう」
艶やかな声が、寝ぼけた頭に滑り込んできた。体に押しつけられている柔らかな感触には馴染みがあって、ああこれは女性の胸だなんて、そんな認識よりも早く、イナズマさんが私にのしかかっていることが分かった。しかし、問題は寝起きに襲われかけていることじゃなくて、彼の、否、彼女の性別の方だった。
「イナズマさん……?」
「なあに」
微笑む唇に目を奪われる。私はこんな風に笑えない。恋人に女らしさで負けるって、どうなのかしら。
さらりとした手の甲が私の頬を滑る。シャツを着崩したイナズマさんからは、普段は感じられないフェロモンが胸元から焚き上がるように溢れていた。くらくらする。
細く長い指先は、あらぬところを行ったり来たりして、するりと肌着の中に侵入しては悪戯に出ていく。私の残念な脳みそは、そういうプレイなのかな、なんていう邪推しか出来なかった。
「やっ、あ……」
「ふふ、かわいい」
相手が男だろうが女だろうが、うまい具合に触られれば、体は素直に反応してしまう。イナズマさんの熱い舌が、くちゅくちゅと卑猥な音を立てながら、私の中を探る。触れられたところから熱が広がっていった。イナズマさんの爪が私の肌を引っ掻く度に、おかしくなってしまいそうになる。
「イナズマ、さん」
「ん?」
「もう、いかせて」
性別など関係なかった。私を捉える瞳は間違いなくイナズマさんのもの。その眼差しは私を攻め立てながらも愛しさに溢れている。
「気持ち良い?」
はだけた胸元の立ち上がった赤い色がちらついて、そのあまりの悩ましさに体が疼いた。ああ、なんていやらしい。
「あっ、あっ、イナズマさん……!」
細い指の先に追い詰められて、息を整える余裕などない。その耳元で愛しい人の名を幾度も呼びながら、与えられる官能にただ震えた。
/溶かして下さい。