明日四十歳を迎えるのだと目の前の男は言った。
「だから何だ」
「だから、明日は一緒にいてくれよ」
「なんで私が」
「ひとりはさみしい」
「……四十にもなろう男が、誕生日に独りでいれないのか」
「冷たいことを言うなよ」
「仕事はどうするんだ」
「休む」
「馬鹿か」
「なあ、一緒にいてくれよ」
「無理だ。他を当たれ」
「俺はお前がいい」
「私じゃお前を満足させられるようなプレゼントは用意できない」
「そんなもの最初から期待してねェ」
欲しがりが、プレゼントは要らないと言う。ニヤニヤとだらしなく笑うのを止めて、ドフラミンゴは真剣な顔で私を見つめていた。
「別に祝ってくれとは言わねェよ。ただ一緒にいてほしいだけだ」
あんたに。そう結んだ唇は弧を描かない。
「プレゼントもいらねェけど、でも、せめて愛をくれよ」
大きな体が、甘えるように手を伸ばしている。私よりもずっと大きな子供がそこにいた。その指の先には私がいる。
私は、その手をとった。ドフラミンゴの顔に安堵の色が広がる。広い胸の中に導かれるまま、逞しい腕に抱きすくめられた。ぬいぐるみを抱きしめるみたいに、ぎゅうと力を込めて、頬をすり寄せてくる。そこには愛しさと寂しさが溢れていた。
「ドフラミンゴ」
この切なさは何だろう。
心が愛してくれと泣き叫んでいる。愛しているのだと咽び泣いている。悲しみに似た感情だ。苦しく、痛ましい。ひとりではいられない。さびしい。温もりが恋しい。優しさが欲しい。
「ドフラミンゴ」
その背に手を回して、大きな子供を受け入れた。じわりと世界が滲む。瞳から零れたのは、きっと愛。
/いとしい