「やめて、ロー、やめてよ」
「うるせェ」


やめて、やめて。そればかりしか言わない、ボキャブラリーが著しく乏しいこの女は、残念ながら俺が生まれて初めて心底惚れた女だ。
俺の手から逃れようとバタバタ暴れて、煩わしいから、手足を切り落としてやった。もちろん、能力を使って。それで静かになればいいものを、こいつはぎゃあぎゃあ騒ぎやがる。
どうしてこんな女に惚れてしまったのだろう。俺は、もう少し品があって、寡黙な女がタイプだと思っていたのに。


「おい。レイプされるわけじゃねェんだ。そんなに騒ぐな」


恋人なんだから、セックスくらいしたっていいだろう。確かに、ムードも何もないかもしれない。何せ今は真っ昼間だ。明かりを付けずとも部屋は明るい。そのうえ、こいつの格好といったら、色気のないサロペット姿で、なおかつ下着は上下でバラバラだ。おいおい、ふざけてんのか。俺の女なら、下着くらい揃えやがれ。


「やっ、やだ!ロー!」


本当にうるさい口だ。塞いでやる。
きゅ、と迷惑そうに寄った眉は、ガキの時から何にも変わらない。こいつは根っからのいじめられっ子体質だ。いつも困ったような顔をしていて、少し意地の悪いことを言っただけですぐ泣きそうになる。でも、認めちまうが、俺はそんなこいつが昔から大好きだ。


「ん、あっ、ロー、ロー」


例えこいつに色気がなくとも。この声に、ひたすら名前を呼び続けられると、たまらなく欲情する。


好きだ。好きだ。好きだ。それこそ、情けないくらいに好きなのだ。


浅はかな愛の言葉と共に残滓をぶちまける。噛みつくように唇を奪ってやった。優しくしたって、こいつは苦しそうにするばかりだ。


「早く墜ちちまえ」


そして、息もできないくらいに俺に溺れてしまえば良い。



/溺れちまえ
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