おい起きろ、帰るぞと声がかかった。いつものように特進クラスのローを教室で待っていたら、知らぬ間に眠ってしまっていたらしい。私は、のろのろと立ち上がった。
「置いてくぞ」
とローは言って、先に教室を出て行った。私のカバンを手に持って。
「待ってよ!ロー!」
慌てて、後ろを追いかけた。すると、既にローは階段を降りきっており、ドサリと床に私のカバンを下ろしていた。
私は駆け足で階段を降りた。
「前から思ってたんだが」
ニヤリと悪い笑みを浮かべて、次は何を言うつもりだろう。
「お前、俺のこと好きだろ」
耳を疑うような言葉の後、体が大きく揺れた。私は思いっきり階段を踏み外した。「うっきゃああ!」と素っ頓狂な声を上げて、私は強かにお尻を打った。
「危ねェな」
抑揚のない声で、大丈夫かと問われれば、カアッと顔に熱が昇った。わかりやすいやつだなとローがクツクツ笑う。
「知ってたの……?」
やっと出た声はあまりにも情けなかった。
「俺のことが好きだから、毎日待ってたんだろ」
「ちがっ、だって、だって友達だから……」
「は?」
ローが眉をひそめて、私を見下ろした。
「俺は、お前と友達でいる気はない」
ガツンと鈍器で殴られたってこういうことを言うんだと思う。ローの目が怖い。私は間抜けな顔でそれを見つめ返すことしか出来なかった。
私が尻餅をついたままでいると、すっと手を差し伸べられた。
「え……」
「立て。帰るぞ」
腕を掴まれ、強い力で引き上げられる。それに従って立ち上がると、トンと頬がローの胸にぶつかった。近くなった距離に驚いて後ろに退こうにも、ローがそれを許さない。
「仕方がねェから、俺も待っててやるよ」
耳元に落ちる低い声。
「お前が俺を好きだと言いたくなるまでな」
ちなみに待つのは大嫌いだ。そう言ってローは楽しそうに笑った。
/足元狂って