意外にも、クロコダイルさんは無抵抗のまま大人しく押し倒されていた。


「それで?」

「はい?」

「てめェは、俺をどうするつもりだ」

「えっ」


どうするって、どうしよう。
暗闇に慣れた目は、クロコダイルさんの首筋をとらえた。絶対、絶対そこから良いにおいするよ!どうしよう!
手をついた所には彼のベルトがあった。意図せず彼の腰に触れていたことに、はっとする。


「どうした。腰でも振ってくれんのか?」


そんなこと期待されても困る。でも、ちょうどそういう位置に座っている私も悪い。自覚すると、下腹部が切なくなった。


「く、クロコダイルさんのえっち……」

「クハハハハ!それはこっちの台詞だ。オジョウサン」


私がもぞもぞしていると、彼の鉤爪が私の脚をさすり始めた。


「本当に、退く気はないみてェだな」


何も言えず、私はぽすりとその胸の中に倒れた。クロコダイルさんの香水と葉巻の香りが強くなる。
はふう。なんて幸せ。


「……重い」

「うひゃあ」


くるりとクロコダイルに転がされ、間抜けな声が出てしまった。ああ!でも、クロコダイルの顔がすごく近い!


「あ、あの、き、キスしてもいいですか!」

「………下手だったら、承知しねェぞ」


私そんな自信ないよ!でもしちゃう。クロコダイルさんクロコダイルさんクロコダイルさん。


「どこにしてやがる」


ちゅ、ちゅと控え目に首や顎に唇を寄せていたら、抗議の声。


「だって、恥ずかしいもんっ」

「生娘でもあるまいし」

「クロコダイルさんがセクシー過ぎるのがいけない!」


ああ、クロコダイルさん舌打ちした!ひどい!傷ついた!でもクロコダイルさんかっこいい!


「少し、黙ってろ」


囁かれた低音に体がカッと熱くなった。
至近距離でその目を見てしまったら最後、もう逃げられない。もちろん逃げる気なんてないけどね。

獰猛な鰐を前に覚悟を決めて目を瞑れば、バクリ、唇を食べられた。


/真夜中の二人
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