忘れかけていた少年のような欲望が蘇りつつあった。余裕のない性急な口づけも、焦るように体を貪る行為も、ある年齢に達してからしなくなり、頭をもたげる欲を単なる生理現象と片付け、淡白な交わりを重ねることもあった。それが、今は目の前の女にどうしようもない渇望を抱いている。


「……なんか上に着ろよい」


形がくっきりと浮かんでいる胸の小さな突起は、なまえが下着を着衣していない証拠だ。粟だった白い肌を晒しながら体を震わす様は、ひどく哀れで、滑稽極まりない。目のやり場に困りながらも、無意識にそこを見てしまって、とても平常心ではいられなかった。次第に触れたいと思い始めてしまって、更には噛みつきたい衝動に駆られるようになる。


「……風邪を引いたらどうするんだい」


妙に掠れた声は、言葉をだめにした。すると、あろうことか、なまえは黙ったままこちらに歩み寄ってきて、俺の腰に腕を絡めてくるではないか。ひんやりと冷たい肌にも、欲望の猛りは落ち着くことがない。それどころか、温もりを求める小さな体に、この熱をぶつけてやりたいとさえ思った。

第一、なぜ、この俺が据え膳を前に我慢しなければならないのだろう。ふざけるな。この状況に、苛立ちを通り越して、怒りさえおぼえてきた。押し倒してしまおうかと考えていると、なまえが腰に絡めた腕に力を込めた。


「マルコは優しいね」

「………」


ふふふと笑う少女を襲うだけの度胸が、俺にはないらしい。大きなため息が洩れて、体から力が抜けていった。

もしかしたら、この生き物に欲情している自分が何より哀れで、滑稽なのかもしれない。

頭を撫でてやると、なまえは嬉しそうに、にっこり笑った。