掴まれた手首に、なまえは、鈍い痛みを感じていた。悲痛な声が小さな唇から漏れる。


「クロコダイルさん……っ」


シーツに縫いつけられた体はどんなに動かそうとも、びくともしなかった。逃げることは叶わない。触れられている部分は互いの熱を持っていたが、クロコダイルの纏う空気はひどく冷え冷えとしている。しかし、どんなに無表情でいても、その内で、激情に駆られ、怒りが激しくうねりながら、真っ赤に燃えているのが、なまえにはわかっていた。


「男をたぶらかして、一体何がしたいんだ?」


細やかな愛撫を施しながら、クロコダイルは蔑むような言葉に吐息を乗せた。指先は繊細な動きでなまえの肌を滑っている。しゅる、と乾いた音が耳についた。ネクタイを外したクロコダイルはニヒルに笑う。


「抵抗しねェのか?」

「…………」

「だんまりか」


眉根を寄せているだけで何も言わないなまえに苛立ったのか、クロコダイルはその唇を荒々しく啄んだ。押さえつけられた体はシーツに波を作り続ける。


「お前は誰のものだ?」


なまえの顎をとらえ、低く囁くと、クロコダイルはその細い首に顔を埋めた。小さな体は甘い声を洩らし、与えられる快楽の中で、縋るようにクロコダイルの首に腕を絡めた。