とけあう




お風呂上がりのキッドからはほんのりと石鹸の香りがする。だから、この時ばかりはキッドが何していようと背中を拝借すると決めている。今日も今日とて、私はそのぺったんこのお腹に腕を回した。


「ね、キッド、なんかしゃべって」


背にぴたりと耳を当てた。振動で伝わる低い声がくすぐったくて好きなのだ。


「あー。胸が足りねェ。もう少し胸があったら文句ねェのになァ」

「なるほどー。おっぱい以外は合格ですか」

「…………」


そんな迂闊なキッドが好きだ。照れると黙ってしまう所も可愛くて好きだ。
私は構わずその立派な背中に頬を擦り付けた。じんわりと伝わる布越しの体温。キッドの首筋あたりから甘い香りがした。


「あーあ、好きだなぁ」


キッドが馬鹿みたいに好きだ。好きだ。好きだ。ぎゅうぎゅうと腕に力を込めて抱きしめる。多分、キッドだって満更でもないのだろう。私はこっそり笑って、Tシャツの中に手を忍ばせた。割れた腹筋にそっと指を這わせば、キッドがぴくりと反応する。感度良好。私はにんまりした。


「変態……」
「その変態に感じるキッドは淫乱だね」


ぐっと言葉を詰まらせた喉に唇を寄せて、たくましい体をゆっくり押し倒せば、甘い時間がはじまる。

さあさあ、愛し合いましょう。清めたばかりの体をドロドロに溶かして差し上げるわ。

最初にキスを強請ったのは、私じゃなくてキッドだった。


/とけあう




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