目の前の男の顔を見てしまうと、先程までの燃えるような熱さは嘘みたいに消えていった。

どうして私は顔を赤らめた男子と対峙しているのだろう。目を丸くして、睫毛を微かに震わせるトラファルガーは、私をかなり困惑させた。ああ、耳まで真っ赤だ。一体何がここまで彼を恥いらせているのか。


「ねえ……」


声を掛けただけだった。けれど、トラファルガーは私が返した袋をばっと顔の前にやって、数歩後ろに下がってしまった。

逃げるようにその場を去るのは自分だと思っていたが、違ったらしい。先に踵を返したのはトラファルガーの方だった。私を置いて、彼はなにも言わず、教室へと去っていく。私は呆然とそれを見送った。

私は動揺していた。恥じらうトラファルガーに対してだけではない。それを見て、可愛いと思ってしまった自分自身に対して、信じられない気持ちがしていた。


「いやいやいや!意味わかんないし!」


激しく頭(かぶり)を振って、きゅっと唇を結んだ。あんなものにときめいてしまったなんて、口が裂けても言えなかった。




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