「ペンギン、俺今日疲れてんのかも」

「お前、また徹夜でゲームしたのか」

「だって、キャプテンがなまえと手ェ繋いでる幻覚が見える」

「はあ?そんな馬鹿な」


キャスケットの言葉に、ペンギンは半信半疑に頭を巡らした。


「……ほんとだ」


そこにあったのは間違いなくなまえと仲良く手を繋ぐトラファルガー・ローの姿だった。


「あの人たち、やっと付き合ったんだ」

「信じらんねー」

「うわ、見ろよ!キャプテンすげえ嬉しそう」


トラファルガー・ローは、いつにも増してニヤニヤと口元をだらしなく弛ませていた。時折ちらちらと繋がれた手を見て、更に笑みを深めている。その光景にペンギンたちは目をぱちくりするばかりだ。


「あー、でも、まあ、なんだ。良かったなー。キャプテン、珍しく奥手になってたからなー」


彼がなまえを好きだというのは、ペンギンたちには周知のことだった。むしろ彼は「なまえに手を出したら承知しねェ」とまでのたまい、彼女に近づく男を牽制しているのだ。それだけではない。彼女と出会ってからは、不良とは思えないほど学校の出席率が上がった。巷では、来年は皆勤賞を取るんじゃないかという噂が流れている。


「しばらくは平穏な毎日が送れそうだな」

「俺たち不良なのにね」


あの北校のトラファルガー・ローが鼻の下を伸ばしている間は平和だろう。何はともあれ、彼の舎弟として、やるべきことは一つだ。


「赤飯、炊かなくちゃなあ」


それ以降も、手を繋いで下校帰る二人の姿がよく目撃された。誰もが二人の交際を疑わず、ロー好きの女生徒からは嘆き悲しむ声が絶えず聞こえていた。


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