無理やりその細い腕を引き寄せた。容易く傾いた体は、平静のなまえを忘れてしまうほど、脆く頼りない。そんな小さな存在が愛しかった。体勢を崩したなまえを抱き止めて、自分勝手に腕の中へ閉じ込めた。自由を奪われたなまえの体が強張って、少し身じろぎしてみせる。けれど、決して俺を拒もうとしない。優しい。なまえは優しい。


「ちょっとだけだ」


離したくなかった。俺たちの間にいつも開いている僅かな距離を0にしてしまいかった。少しだけで良い。抱き寄せてしまえば、心は見えないから、関係ない。自分もののように感じられる。友情でも愛情でも何でも良い。ただ近くに、そばにいることが出来れば、それで良い。


「ロー?」


昔、寂しがり屋だとなまえに言われた。そんなことを言うのはお前だけだと笑えば、笑い返されて。そこに流れていた空気はひどく幸せなもので、触れたことのないあたたかさで満ちていた。


「ちょっとだけだ」


心配そうに眉を寄せて、俺の顔を覗き込もうとするなまえの肩口に顔を埋めて、それを阻む。
星が散る冬の空の下。震える心臓が気づかれないことを祈った。


/君を想う
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