ふわりと、髪をまとめ上げたなまえの首筋から甘い香りがした。俺は吸い寄せられるようになまえの細いうなじに鼻先を近づけ、深く息を吸い込んだ。鼻孔にを満たした香りにくらりとした。我知らず俺はなまえの体を抱き、その首に顔を埋め、目を閉じて思う存分にその香りに溺れた。熱い血汐の流れる肌は、温かかく心地よかった。
一瞬、ひゃっとなまえが小さく叫び、その体に緊張が走った。少しでも鼻先が肌を掠めようなら、なまえは首を反らせて身を捩って嫌がった。それでも俺は首の根に沿って後ろから前へと鼻先を動かし、行為を止めなかった。
心臓が激しく猛り、体はますますなまえを求めた。口を開いてこの舌で味わうことが許されたなら、俺はどこまでも滑らかで柔らかいその柔肌を愛でいつくしむことをしただろう。
「やめろ!!」
我に返るとはこういうことなのだと思う。なまえの大きな声にはっとして、俺は顔を上げた。俺は、しっかりとなまえの腰に腕を回し、髪に手を差し込んで、がっちりと小さな体を拘束していたことに気づいた。
腕の中に納まっている柔い女の感触。意識を向けてしまうと、異常な熱が顔に上った。なまえも首まで真っ赤して、体を縮こまらせながら非難と羞恥の色を含んだ瞳で俺を睨んでいた。しかし、俺はそんなことよりも、ちらりと目に入った髪の間から覗く愛らしい耳の方に気を取られていた。とうとう指はそこに触れた。なまえはびくっと反応を示したが、身を堅くしただけで動かなかった。
「耳まで真っ赤だな?なまえ」
「ううう、うるさい!」
か細い声に胸が高鳴る。わたわたとするなまえに自然と口の端が吊り上がっていった。そんな可愛らしい抵抗なら大歓迎だ。
「離せ!」
「いやだ」
「いやじゃない!バカ!」
耐えられなくなったらしいなまえは遂にもがき始めた。俺としても逃がす気などないので、更にその体を掻き抱いた。
「変なこと、するなっ!離せっ!」
「俺に命令するな」
なまえは赤い頬を見られたくないのと早く離れたいのとがごちゃ混ぜになって、抱きしめられたままいやいやと首を振っている。俺はなまえの腰を抱く腕にぎゅうと力を込めた。
「離すつもりはねェ」
ああだこうだ言っても、最終的になまえの方が折れて、俺の我が儘は通るのだ。諦めたなまえのため息が聞こえるのを、その肩口に顔を埋めたまま、後は待つだけだった。
/欲情0p