「それ、どうしたんすか?」


シャツを脱いだキャプテンの背中は穏やかではない生傷があちらこちらにあった。掻き毟ったような爪痕。長い爪に抉られたのか、損傷がひどい。最近付けられたものなのか、まだ血も乾いていなかった。


「ほんと、何したのって感じっすね」
「おい、キャス、汚ェ手で触んじゃねェ」
「汚くないし!洗ったばっかだし!」
「うるせェな。そういう問題じゃねェんだよ」
「す、すいません。てか、キャプテン、どんなプレイしてんすか?」
「勘違いすんな。ちょっと揺さぶったくらいで、こんなにしやがったんだ」


それにしたって容赦ない。喧嘩した傷よりグロテスクだ。わざとじゃないかと思えてくる。


「なまえって案外感じやすいんすね」
「……お前、想像させんじゃねェよ。うっかり勃っちまうだろうが」


キャプテンは「痛ェ痛ェ」と言いながら、体操服を着込んだ。


「相手はなまえじゃねェ」
「えー。キャプテン、好きな子いても他の子とエッチするんすか」
「何引いてんだ、キャスケット。大抵の男は好きな女じゃなくても抱ける」


そんなものなのか?少なくとも俺は好きな子以外とエッチしたくない。だって、なんかやだ。


「それにしても痛々しいなぁ」
「ああ。背中は痛ェし、五月蝿いくらいにアンアン喘ぐしで散々だったな」
「誰っすか?その子」
「お前のクラスの委員長」
「えっ、きまず!」
「もう二度とねェから安心しろ。あー、なまえなら絶対に俺のために爪を切る」
「もれなくキャプテンの妄想じゃないっすか」
「なまえはそういう女だ。俺は知ってる」


確かになまえは律儀だし、そういうところにも気を配れるやつだと思うけれど。残念ながら全て妄想だ。キャプテンは、いつからそんなになまえを好きになってしまったのか。
なまえのことは嫌いじゃない。普通の女と違って、さっぱりしていて心持ち良く話ができる。甘い容姿とのギャップがまた良くて、なかなか魅力的だと思う。だけど、なまえは少し男前過ぎる。俺は外見も中身も女の子っぽい子が好きだし、言葉遣いも柔らかい方が良い。


「って、キャプテン、露骨に興味なさそうっすね」


俺の話に飽きたのか、途中から、キャプテンはつまらなそうに自分の爪を眺めていた。


「あー、あとなまえのスカート丈が許せないんすよね。長くね?みたいな」
「馬鹿だなお前。あの膝丈が良いんだろ」
「マニアックだなぁ」


流石キャプテン。なまえの話になると食いつきが違う。


「まあ、確かにあいつがスカート丈を短くしたら、そそるな」


舌舐めずりしたキャプテンの顔は恐ろしく格好良かった。
このあと、なまえは多大なセクハラを受けるわけだけど、キャプテンがいつになく生き生きしているから、俺には止められなかった。


「わっわっわっ!変なとこ触るな!」
「騒ぐななまえ。ちょっとスカートを折るだけだ」
「やめろー!!」


/男子会議
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