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(…にしても珍しいこともあったもんだ)

マルコを見送った彼は、そんなことを考えながら高い空を仰いだ。
秋島に向かっているせいか、日差しは強すぎず過ごしやすい気候だ。

彼の思う珍しいこと、というのは先程のマルコの様子だ。
いつも小難しい書類や本などと向き合って十分な睡眠をとっていないようだが、それを表に出すようなことはしない。

(まあ、いつも眠そうな目してっけどな)

マルコの顔を思い出して、ひとり吹き出した。
必死に堪えようとしても肩は揺れてしまう。

「おーい、サッチ!」

サッチと呼ばれた彼の居る甲板より高い位置から声がした。
少し上を向けば、底にはよく見知った顔が覗いている。
胡座をかいて座りこむ後ろには、ずらりと真っ白なシーツが並んでいた。

「エース、お前そんなとこ登ってなにしてんだ」

「洗濯物の見張りしてたんだが、気づいたら寝てた」

いやー参った、とこぼすエースに苦笑する。彼が寝る時と場所を選ばないのはいつものことなのだ。初めこそ驚いたそれも、もうすでに日常となっている。

「それじゃ見張りになってねえよ」

「もっともだ」

まじめな顔で返してくる若き隊長に苦笑すると、彼は落ちていたテンガロンハットを被り直した。
バサバサと音をたててシーツがはためくのと、船室のドアが開くのはほぼ同時だった。
そこから出てきたのは大きな籠と一緒にチューリップ帽を深く被った小さいやつが出てきた。

「ようname、調子はどうだ?」

「おかげさまですっかり良くなりました」

唯一見える口元が、小さく弧を描くのを見て彼もつられて笑った。
昨日エースに持って行かせた食事はサッチが用意したものだったのだ。

自分より幅の大きな籠を、両手で抱えたnameはこれから洗濯物を取り込むのだろう。
天気が良いから、よく乾いたはずだ。
今夜はきっとあのシーツで気持ちよく眠ることができるのだ。

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