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「マールコ」

自慢のリーゼントを揺らして船縁に来た彼は、そこでひとり海を眺める男に声をかけた。
声をかけられたほうは気配にも気付かなかったのか、少し驚いたように返事をした。
もちろん表情には出ていないが、彼が気づいたのは長年の付き合いによる感のようなものだろう。

「なにボーっとしちゃってんの」

「なんでもねえよい」

「どうせまた紙っぺらでも眺めて徹夜したんだろ?よくやるなあ」

「うるせい」

両の手を上に返し呆れたようにため息をつく彼を、マルコは慣れたようにあしらった。
寝不足のせいなのか思考は鈍いが、特に生活に支障はないので気にしていなかった。
そこまで自分はヤワじゃないとマルコは自負している。

「夕飯まで少し寝たらどうだ。仕事はもう特にないんだろ」

彼の言うとおり、夕べ寝ずに書類を片付けたため仕事はない。
隊の仕事も入っていなかった。現に今こうして暇を潰している。
煙草も今日はやけに減りが早い。

「そんなんで急襲にでも会った日にゃあ、きっと面目丸潰れだぜ一番隊長さん」

確かに、今のマルコでは普段より戦いに不利であろう。
せっかく時間もあるのだし、ここで休まない手はない。
ベットがまだあのままだとか、夜寝れなくなるだとかそんなことはどうでもいいかと考えなおした。

「わかったよい、少し寝てくる」

「良い夢見ろよー」

ヒラヒラとマルコに手を振る。
彼の首のスカーフが風に少し揺れた。

今日も良い天気だ。

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