Main | ナノ
「おい、マルコ」


久しく名前を呼ばれていなかった声に、彼は驚いた。
見れば、船内の廊下の薄明かりの中、リックが壁に寄りかかっている。
二人は同じ船に居ながら、ほとんど会話もないが、古くから知った仲だ。


「そいつを、どこに連れていくつもりだ?」

「寝ちまって起きねぇから、部屋に連れて行こうと思ってねい」

「そっちはお前の部屋だろうが」


低く静かに言うリックは、マルコを正面から見据えた。
酒の臭いが漂っている。
今日もしこたま飲んできたようだ。


「なにか問題あるか?」

「ああ、お前みてぇな鳥野郎とそいつが同じ寝床ってのは問題あるだろ」

「………酔ってんのかよい」

「いや、酔っちゃいねえよ、ただnameとは同室の誼だ。面倒見てやらねえとなぁ」

「はい、待ったー」


空気がピリッと凍りついたところへ、サッチの仲裁が入る。
二人が覇気を出したため駆けつけたのだ。
マルコの腕の中に居るnameは、苦しげに眉を寄せている。


「やるなら外でやれよー、ほら、nameはこっちで預かるからなー」


流れるように馬鹿二人を誘導し、nameを受け取った。
抑える理由がなくなった二人は、さらに熱くなりだす。
するとどこから湧いてきたのか、人が集まってきた。


「おーい!マルコ隊長とリックさんが久しぶりにやるってよ!」

「おお、最近静かだったからなぁ」

「今回は何が原因だ?」

「どうせ女かオヤジだろ!ぎゃはは」


好き勝手なことを言い合う男達のなか、静かに睨みあう二人は既に戦闘体勢に入っている。


「オヤジの船を壊すわけにはいかねえよい」

「言われなくてもわかってら」


辺りが青白い光で包まれ、一瞬明るくなる。
それと同時に、強い風が吹き抜けた。
不死鳥に変わったマルコと、床を強く蹴ったリックが外に向かって、目にもとまらぬ速さで移動したのだ。


「おい!追うぞ!!」

「さっさとしねぇと見逃しちまう!」

男たちは愉しげに笑いながら、二人の後を追う。


「あいつらも、まだまだ若いな」


そんな中を抜け出したサッチは、気持ちよさげに眠るnameを寝室へ届けるのだった。





- 49 -



|
main