中の様子は出た時と変わらない。 当たり前だ。 しかし何かがおかしい、とマルコは首を傾げる。 「…何が違うんだよい」 なかなか答えが見つからず独りごちる。 そう、何かがいつもと違うのだ。 部屋は出た時と変わらないのに…いや、むしろ出た時と変わらないことが違うのか。 (ああそうか) いつもならベッドメイクされているのだ。 しかし今日は使用後のまま皺が寄った状態のまま。 今までナースか他の船員の誰かがやっているのだろうと、特に気にとめることもなかった。 当たり前すぎて、それについて考えたことなどなかったのだ。 今思えば、夕食後に部屋へ戻ると皺ひとつない清潔なシーツが毎日のように用意されていた。(もちろん天候の悪いときが続けば例外だが) しかしここは荒くれ者の集う海賊船であって決してホテルや旅館などではないのだ。 今さらながらに違和感を持った自分に、歳のせいで鈍ったかと思いながら書類が山積みにされる机にたどり着く。 (変わったやつも居るもんだな) もしナース達ならば人数もそれなりに居るので、今日だって仕事はできたはずだ。 ということはナースではない。可能性のある船員はといえば、戦いの腕に自信があるガサツな男ばかり。 ナース達でないとなると、その中の誰かが毎日几帳面に仕事をこなしていたということになる。 一体どんなやつなのだろうか。 マルコは自分が珍しく興味を持っていることに、小さく自嘲の笑みをこぼし机の書類と向き合った。 今夜はもう男がベットに入ることはないだろう。 何せ洗い立てのあのシーツで眠るのはとても心地よいのだ。 ← | → main |